逃げた先にだって、希望はある! 朝井リョウ直木賞受賞後第一作! 表紙イラストはジブリ近藤勝也が描き下ろし

小説・エッセイ

公開日:2013/9/25

世界地図の下書き【電子特別版】

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 集英社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:朝井リョウ 価格:1,234円

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可愛らしい小さな子供たちが、胸を痛めて必死に生きている姿が悲しかった。悲しくて、応援したくなった。でも私がいくら悲しんでも、子供たちは元気だ。どうにもならない世界に、ちゃんと逃げ場を見つけて、希望を見つけて、がんばる。私たちには、希望を見つける力が必要だと思った。

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朝井リョウの直木賞受賞後第一作。児童養護施設に集まる子供たちを描いた作品だ。小学校5年生の太輔が施設に預けられたのは3年前。両親を事故でなくした太輔は、心に傷を負っていた。施設にいるのは、同じく心に傷を負った仲間たち。同い年の淳也とその妹の麻利、ひとつ下の美保子と、6歳年上の佐緒里だ。

太輔と同じ生活班で暮らす4人はみんな個性的で、可愛くて、見ているのが楽しい。でも楽しい中に、ふとそれぞれの「事情」が見え隠れする。いじめを受ける淳也、ピュアな麻利は「変わった」自分を受け入れてもらえない。おませな美保子はそばにいない母親の自慢ばかり、年長者の佐緒里は受験を目前に夢が断たれてしまう。そんな状況の中で自分たちを支えるのは自分たち同士の、強い「絆」であった。「絆」もつ彼らに、別れはいっとうかなしい。

  
   

施設卒業を控えた佐緒里に、太輔たちはある大掛かりなサプライズを思いつく。それは、一瞬だけど、佐緒里の夢を叶えるサプライズ。準備を通しそれぞれが自分と向き合う中で、ひとりひとり生きる「答え」を見つける。その「答え」を「逃げ」ととらえることもできるかもしれないけれど、でもそれは、少しでも見える希望に向かっている。「逃げた先にも、同じだけの希望があるはずだもん。」逃げ場のなくなった現代の私たちに、希望に向かう勇気を与えてくれる、温かくて感動的な作品である。


おませな計算ずくの美保子ちゃんがかわいい

世界地図の下書き。描いている途中の僕らです

このメッセージが、胸に響きます