大泉洋主演、監督劇団ひとりによる映画『青天の霹靂』の原作本

小説・エッセイ

公開日:2013/9/27

青天の霹靂

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:劇団ひとり 価格:507円

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「いつからかな、自分が特別だって思わなくなったのは。」

そんな、ものうげでちょっぴり自意識過剰気味な青年のモノローグ風の書き出しからクイッと一気に引き込まれかけて、「そういえば初作品『陰日向に咲く』のときも “期待しないで読んだのに劇団ひとり、うまいじゃん!” って驚いたっけ」と以前の記憶が蘇る。

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劇団ひとりと言えば、バラエティやクイズ番組のひな壇の常連、あるいは映画化され11月にはDVD発売もされる『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』での川島省吾がすぐ浮かぶ。Twitterでも「“iOS7が使いやすいか否か”なんて話題を周囲に振るが、本当は使いやすいか否かはどうでも良くて、早速アップグレードしたことをアピールしたいだけの私。」などとふだんから自意識過剰かつナルシストである。その過剰な意識は周囲に対する観察眼にもいかんなく発揮され、彼の描く物語の登場人物にはリアリティがあり、どこか切なさをもってたたずんでいる。

主人公は、泣かず飛ばずのしがないマジシャン志望の晴夫・35歳。母に捨てられ父とは絶縁状態。後輩マジシャンには追い抜かれ、思いを寄せるママは振り向く気配がちっともない。客にも「君、ないわ」と言い捨てられる。最低なのは別に今日に限ったことじゃない。そんなある日、父の訃報が舞い込み、その死を悼むために訪れた線路の高架下で、晴夫は40年前の浅草にタイムスリップ。まさに青天の霹靂。昭和48年浅草で若き日の両親と出会うのだ…。

文章はエッセイのようにサラサラと読みやすく、タブレットで読むのにちょうどいい。プロットや伏線を張るのがあいかわらず上手で、「たぶんそうだろうな」と展開がうっすら予想できつつも、うっかり最後にもっていかれる。移動中の電車内でひと息で読み終えた。

『青天の霹靂』は来年5月、監督:劇団ひとり×主演:大泉洋で公開される。映画のほうも、泣いて笑ってほっこりする仕上がりが期待できそうだ。


晴夫は場末のマジックバーで頑張るが、店長にはダメ出しをされ、脇の下に隠したハトがサウナから出てきたオッサンみたいにグッタリ、というくだりが切なくも笑える

青天の霹靂――予想もつかなかったタイムスリップのおかげで晴夫は昭和を生きる父と母に出会う

真実を知り、晴夫の心の中にも変化の兆しが現れる