コミュニケーション下手の大先輩・乱歩兄貴のエッセイを読もう!

小説・エッセイ

2013/10/2

江戸川乱歩随筆選

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android 発売元 : 筑摩書房
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:江戸川乱歩 価格:918円

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「人間に恋は出来なくとも、人形には恋ができる」

そんなドキリとするフレーズを、今から80年以上前に書き記した作家がいる。ミステリー界の巨匠・江戸川乱歩だ。乱歩はご存じのとおり『D坂の殺人事件』『怪人二十面相』などの作品で、日本ミステリー小説の礎を気づいた人物。しかしその実態は、この世のどこにもない幻想世界に終生憧れを抱きつづけた、傷つきやすい夢想家であった。

本書『江戸川乱歩随筆選』は、そんな乱歩の内面をうかがわせてくれる抜群におもしろいエッセイ集だ。

博学だった乱歩らしく、本書の話題は多岐にわたっている。

ミステリー小説への深い知識を披露した「顔のない死体」「隠し方のトリック」、同性愛になみなみならぬ興味をよせた「J・A・シモンズのひそかなる情熱」「もくず塚」、親交のあった作家たちの思い出を綴った「夢野君余談」「坂口安吾君の思い出」などなど。しかし。乱歩自身の人生と内面を描いた、自伝的エッセイがなんといっても興味深い。

みずからを「厭人癖」「孤独癖」と表現しているように、乱歩は幼い頃から人づきあいの苦手な、内にこもりがちな性格だった。友達が少なく、夜道を歩きながら、ひとり言をしゃべりつづけていたという少年時代。飽きっぽさとコミュニケーションの不得手さからどんな仕事に就いても長続きせず、事務員、古本屋、屋台のラーメン屋、新聞広告員、タイプライターの行商など、さまざまな職業を転々とすることになった青年時代。会社の寮の押入れに閉じこもり、空想の世界に遊ぶことを好んだという乱歩は、現代ならまちがいなくニートと判定されてしまうような人物だ。

そんな現実嫌い&幻想好きの性格から生まれてきたのが、人形・レンズ・犯罪・分身・ユートピアなどへの偏愛だった。本書に収録された「旅順海戦館」「レンズ嗜好症」「変身願望」などのエッセイには、そうした乱歩の特異な性格が色濃く反映されている。誰にも真似のできない幻想的で怪奇的な小説を多数遺した乱歩は、エッセイでもあくまで乱歩らしさを貫いているのである。

コミュニケーションに悩んでいる諸君。夢の世界に憧れて、仕事をしたくないと思っている諸君。今すぐに江戸川乱歩を読みましょう。君が悩んでいることは、乱歩の兄貴が何十年も前に代弁してくれているぞ!


エッセイ「人形」冒頭。人形となら恋ができるなんて、素敵すぎる

空想的だった乱歩の少年時代

押入れに閉じこもっていた青年時代を回想

乱歩は「厭人癖」「孤独癖」のもちぬしだった

きわどい告白を含んだ「乱歩打明け話」にも注目

目次1

目次2

目次3

目次4

目次5