人気漫画家・荒木飛呂彦の視点で映画を楽しむ!
公開日:2013/10/5
ルーブル美術館で原画展が行われたほどの世界的な漫画家荒木飛呂彦が映画に向けるパッションを語る1冊。著者と「すごい!」と思う映画が大体一致していたのも面白かった理由のひとつかも。
著者曰く、映画にはジャンルにかかわらず「サスペンス」が必要だと。それは一般的な推理ものという意味ではなく、見ている人の興味をひきつけるだけの何か、ストーリーなり、キャラクターなりが「なにかあるぞ」「なにか起こるぞ」「なにかするぞ」と思わせるような牽引力。
本書は曰く「物語が“サスペンス”を目的に作られたかどうか」を基本に選んだ映画ばかりを集めた解説というわけで、取り上げられる映画の丁寧な描写の数々はさすが連載25年を超える人気作家の腕。「観てみたい!」と思わせる内容、すでに観ているものなら「そうだよね、そうなの、それがいいんだよねー」と一緒にうなずけるのが楽しい。
『戦艦ポチョムキン』から始まり、『サイコ』『卒業』『ミッドナイト・エクスプレス』『インディアナ・ジョーンズ』など、最近のものでは『シュレック フォーエバー』や『96時間』『アルゴ』も。
きっと通常の映画批評家なら一貫性がないといってしまうかもしれない取り上げられた作品群は、彼が言う「サスペンス」をきちんと含み、作家の作品の求めている人間性やストーリー性、構図やトーンはこういう映画からヒントとインスピレーションを汲んでくるのかなぁと思うことしきり。
映画批評は作品の善し悪しに帰結することが多々ありますが、「こんなに凄い!」「こんなに楽しい!」「こんなにかっこいい!」という著者の映画讃歌がシンプルに気持ちのいい、1冊です。
まずは著者のいう“サスペンス”とはなんなのかをじっくり
デ・パルマを選ぶあたりにまず大共感
イーストウッドとベン・アルフレックの観察も面白い
さすが漫画家観るところが違う