『ピーチガール』の上田美和最新作! 初恋を、思い出してみませんか?
更新日:2013/10/21
何の変哲もない町並みを美しく見せてくれるのは、恋だ。学校でも帰り道でも家でもどこでも、世界に光が満ちてみえる。気がつけば、自然とあの人の姿を目で追ってしまうし、ひとつ良いところを見つけると瞬く間に好きになっていく。目が合えばそれだけで胸が高鳴るが、あの人と向き合うだけの自信は持てない。一体どうしたものかと思い悩んだこと、アナタにもありませんでしたか?
『あるいていこう』は『ピーチガール』で名高い上田美和の最新作である。この話の主人公は12歳、の中学1年生。甘酸っぱい青春ストーリーを鮮やかに描き出し、読む人の胸をキュンとさせる。大きな事件が起こるわけではない。だが、ゆったりとした学校生活の中で、成長していく少女の姿が眩しいし、もうあの頃には戻れないのかと思うと少し羨ましかったりもする。
舞台は、溜池以外の観光名所がないような田舎の中学校。中学1年生の池谷美海は恋愛やオシャレに興味を持つようになったまわりに取り残されているような気がしていた。憧れの高田センパイにはどうやら好きな人がいるようだし、お調子者の同級生・丸毛にはおちょくられるし、何も上手くいかない毎日が続いていく。だが、ふとしたきっかけで美海は恋に目覚める。美海の恋の行方は?何だか懐かしい気分にさせられる、美海の初々しさから目が離せない。
初恋ほど、無意識的なものはない。気づいた時には既に手遅れ。「ヤな奴」と思っていたはずなのに何故か惹かれていく。そんな中学生にありがちな恋を本書は可愛らしく描き出している。
好きな土地だけれど何もない、と思っていた地元の魅力を教えてくれたのは好きな人だった。好きな人の存在によって、初めて自分の住む街、そして自分自信を見つめ直して美海は一歩ずつ歩を進めるように成長していく。
大人になって今だからこそ、青春時代が懐かしくなることがある。忘れかけていたあの頃を思い出せてくれる、とっておきの1冊。
舞台は何の変哲もない田舎街
美海は周りのみんなはどんどん大人になっていくことに少し焦りも感じている
同級生の男子に馬鹿にさせる毎日
そんな中でセンパイに惹かれていく美海
でもやっぱり身近な人のが…美海の成長が眩しい1冊
(C)上田美和/講談社