日本の司法制度はどこへ向かっているのか?

公開日:2011/10/7

これでいいのか日本の裁判

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 平凡社
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:eBookJapan
著者名:佐藤友之 価格:540円

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著者は「ニッポン監獄事情」「代用監獄33人の証言」などがあるフリーのジャーナリスト佐藤友之。本作では21世紀の日本の司法制度改革の是非を検討している。

裁判とは主張と証拠のぶつけ合いである。証拠の解釈を含めて、裁判所がその主張を認めたほうが勝利する。そして市民にとって、裁判とは紛争相手の責任を追及する唯一の合法的な手段なのである。

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ではこの日本における裁判とはいかなる状況なのだろうか?

裁判では、原告側の主張をほぼ全面的に認めるのは、例外中の例外なのである。特に刑事裁判でそれは表れている。実際に被告人の有罪率は99.95パーセント。一万人起訴されたうち、無罪になるのはたった4、5人しかいない。裁判官が検察官の主張にのみ耳を傾けているため、検察側に有利な判決が多いという感がある。外側から見れば、実際加害者に有利な司法制度と思われてもしかたないだろう。

ゆえに被害者の権利をもっと拡充すべきと著者は説く。加えて被害者の精神的、経済的ケアをしなければ、法廷は加害者へ憎しみをぶつける場になりかねない。大半の被害者は裁判所に重罰を求めている。「目には目を。歯には歯を」の古めかしい刑罰観は今なお人間の本能に宿っているのだ。

そして司法制度自体立ち止まっているわけではない。法科大学院の設立、裁判員制度の導入など改革も進んでいる。だが司法制度を変えるのは政府ではなく、市民自身でなければならない。そのためには多くの人たちが裁判に関心を持つことだと著者は説く。少しでも関心を持つと、この国の司法は私たち市民の権利獲得に機能していない現実に気づくはずである。

そして気づいた後、私たち市民はどのような行動に出るのか?
ゆっくりでもいい。ゆっくりでも行動することに意味があるのだから。


目次

民事・行政事件の流れをわかりやすく図で表示

刑事事件の流れを図で表示 (C)佐藤友之/平凡社