悲劇を止めるのは人間の良心か、システムか? 大型新人が送る本格医療ミステリー!

コミック

2013/11/5

ネメシスの杖(1)

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:朱戸アオ 価格:540円

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私はグロというか、例え絵でも内蔵を見るのが苦手で、手術シーンが多い医者ものが鬼門でこれまで避けてきました。しかし『ネメシスの杖』は寄生虫が主役の話。内蔵描写がこれといってなく、とても安心して読めるなぁと、電車の中で読んだのが失敗でした。泣かされました。動物もの以外だと強固なはずの私の涙腺を攻略してくるとは、さすが期待の大型新人。医療事故を防ぐための一調査員が、結果的にバイオテロと戦うという展開に手に汗握り、また犯人の動機や思いに打ちのめされ、気づいたら泣いていました。完敗です。続刊が今から非常に楽しみな1冊です。

舞台は現代日本、主人公の阿里 玲(あさとれい)の職業は患者安全委員会(PSC)の調査員。主な仕事は医療事故の原因を究明し、同じ悲劇が怒らないためのシステムを構築すること。けれど発足したばかりの組織システムは欠陥だらけで、思うように仕事は進みません。苛立つ阿里のもとに届く、一本のタレコミ情報。「台田総合病院は“シャーガス病”に罹患している患者がいることを把握しながらカルテを改ざんし届出を怠っている。」阿里は早速台田病院へと足を運びます。それが大きな事件の幕開けであるとは知らずに…。調査するうちに出てくる上層部の隠蔽体質、利益優先の人命軽視。バイオテロの犯人は、そんな人命軽視に怒りを覚えた復讐者でした。

「人間なら誰しもが持つ、小さな身勝手が悲劇を生む。だから、そんな当たり前の、普通の人間が悲劇を起こせないようにするシステムを構築するべき」という阿里。「人間には良心がある。自分がどれだけ悪いことをしたのか分かっていないから悪事を行える。自分が行ったことを、我が身をもって知れば同じ悲劇は起こせないはずだ」という犯人。まさに理性と感情のぶつかり合い。どちらにも正しさがあり、けれどきっと間違いもある。2人がそれぞれ信じる思いがどうぶつかって、どういう結末を迎えるのか。それはぜひとも、本作を読んでお確かめください。


医療事故の原因が分からなければ対策も立てられない。けれど、調書は命令されると警察にも公開をせねばなりません。裁判の時に不利になると分かっていて、みすみす自白する訳もなく…結果、原因はまともに究明できず、対策も立てられないという悪循環が生まれる現状に

システムの欠陥をわかっているのにまともに改正もできず、仕事もままならない現状に苛立つ阿里。そんな彼女のもとに舞い込む一本のタレコミ。事件の幕開けはここからです

愚直に正攻法で改善を目指す阿里の行動は、実を結んでくれはしなくとも、それを見ている者の目には信頼出来る人間として映ります。彼女だからこそ話す気になった医者もしかり。けれど、同じく自分の正義感によって行動したことのある先達は彼女に諭すのです「君の仕事はきっとうまくいかない」「だから 覚悟が必要なんだ」正しさよりも理不尽が強い世界にもどかしさが募ります