『時をかける少女』の1つのアンチテーゼ。過去と現在の矛盾は無慈悲に収束する

小説・エッセイ

更新日:2013/11/12

リライト

ハード : PC/Android 発売元 : 早川書房
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:法条遥 価格:588円

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『時をかける少女』といえば筒井康隆のジュブナイルSF小説。何度も映画化され、発表から40年以上たった今でも多くの少年少女に親しまれています。さて、今作の『リライト』はそのジュブナイルSFの大御所、『時をかける少女』の一種のアンチテーゼとなっています。

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人間が未来から過去に来るということ、同じ時間の繰り返しに、小さなひずみだったはずのものが少しずつ大きくなり、終いには起こるはずのないパラドックス(矛盾)を生んでしまう。現在と過去との間に相成立するはずのない矛盾が生まれたとき、世界はどう収束するのか。SF史上最悪のパラドックスが、無慈悲に完璧に収束するさまをぜひご覧あれ。

作品舞台は1992年と2002年の日本。主人公の石田美雪は1992年の夏に、園田保彦という少年と出会いました。ひょんなことから彼が300年後の未来から来た未来人だと知った美雪は、彼が過去にきた理由である1冊の本探しを手伝うことに。

そして夏休み前日の終業式があった日、事件が起こります。2人は未来に関わることを他人に聞かれないように旧校舎で会話していたのですが、それが倒壊してしまったのです。美雪を庇った保彦は1人倒壊した校舎の下敷きになり、絶体絶命のピンチに。彼女の手元にあるのは、保彦が過去にきた原動力である「時間を移動できる薬」のみ。ただしこれは悪用されないように、保彦以外の人間が使うと5秒間しか違う時間軸にいられないという条件付きでした。美雪はその薬で10年後の自分の家から携帯電話を拾い、保彦を救いました。

それから10年後の現在。美雪はかつての自分がそうしたように、今から来る10年前の自分が携帯電話を受け取れるようにスタンバイしていました。けれど、何故か10年前の自分は現れないまま。疑問に思い調査していく中で、同級生たちの連続死など、記憶にないことが起きていることに気づきます。一体過去の「何」が変わって、彼女たちは死ぬことになったのか―

読み終わった後、作者の法条遥さんが第17回日本ホラー小説大賞・長編賞でデビューをしたと知って納得しました。なるほど、道理で話の節々から漂うそこはかとない恐怖。何が起こっているのか原因も分からない、けれど確実に事態が悪化していくあの恐怖はまさしくホラー。怖いのに読むのが止められない魅力がある、大変おもしろい1冊でした。


美雪は10年前の保彦を助けるために、万全の体制で待っていたのだが…

確かに美雪は10年後の自分の家から携帯電話を持って帰ったはずだった。なぜ10年前の自分は姿を見せないのか

一体何が起こっているのか。調べていくうちに、美雪は自分が去った地元で不可解な同級生の死亡事件が起きていたことを知ることに