死神と一緒に仇討ち? 勝つのは正義か悪か?

小説・エッセイ

公開日:2013/11/25

死神の浮力

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:伊坂幸太郎 価格:1,439円

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黄色い線の内側に下がっていれば、永遠に生きられると錯覚してしまうのは私だけなのだろうか。危ないものに近づかなければ、ずっと生きていられるような気がしている。だが、死は突然やってくるのだろう。いつどこでどのようにこの人生が終わるかなど私達人間には想像も出来ない。しかし、もしかしたら死すべきか生きるべきかは誰かが天の上でいつも見極めているのかもしれない。その人知を超えた何かは、時には近づいて、人間が天命を全うする姿を目に焼き付けているかもしれない。

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『死神の浮力』は伊坂光太郎の最新作品だ。本作は映画化及び100万部突破の大ベストセラーとなった短編集『死神の精度』の続編である。前作と同様、主人公は、死神の千葉。死神の「調査部」員として人間界に派遣され、調査対象となる人間を7日間にわたり調査してその死の可否を判定する役目を担う千葉が今回調査することとなったのは、山野辺遼という小説家だ。

1年前、山野辺遼のひとり娘・菜摘が殺された。犯人として逮捕されたのは近所に住む27歳の男性、本城崇。彼は、証拠不十分により一審で無罪判決を受けるが、被害者の両親・山野辺夫妻は本城が犯人だということを知っていた。山野辺夫妻はいきなり目の前に現れた死神・千葉とともに人生をかけて娘の仇を打とうと決意する。どうやら仇相手の本城にも死神が付いているようだが、山野辺夫妻は復讐を成し遂げることが出来るのか? そして、千葉が山野辺遼に下す審判とは?

本城は非常に狡猾な男だ。彼は山野辺夫妻だけに菜摘を殺す映像を送りつけたが、それは一度見ると削除されてしまうプログラミングが施されていた。おまけに裁判が有利に進むような証拠を事前に残した上で犯行を行ない、保釈された後は山野辺夫妻に無実の罪を着せようと画策している。仇討ちに現れた夫妻を軟禁したり、車に爆弾をしかけたり、彼らに関わった人間に毒を持ったり…。おまけに悪運も強いらしく、本城を調査していた死神は彼に死を与えるどころか20年間の寿命を保証してしまう。運命はそこまで残酷なのか。罪深い人間ではなく、正しいことを指摘する人間が死なねばならないのか。ページをめくれば、最後まで一気に読まずにはいられない1冊だ。


「良心」を持たず、犯罪をゲームだと思っている「サイコパス」である本城に娘を殺された山野辺夫妻

本城が娘の殺害映像を送ってきたことを回想する山野辺遼

死神・千葉の言動のズレがおかしい

死ぬ若者が増えているため、死神界では寿命還元キャンペーンが行なわれていた