10匹の猫を健やかに飼うために伊豆高原へ引っ越す悪戦苦闘の日々

小説・エッセイ

2013/11/27

猫とあほんだら

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:町田康 価格:1,404円

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「猫にかまけて」、「猫のあしあと」、に続く猫エッセイの第3弾。

自宅に6匹、仕事場に2匹の猫をかかえる著者は、猫たちがもっと暮らしやすくなれるよう、伊豆半島の一軒家に引っ越そうと決意する。ところが家探しの途上で、新たに生後1ヵ月ほどの幼猫2匹を見つけ拾ってしまい、いまにも死にそうな2匹の面倒を見つつ、引っ越し後の改装に手を焼くわ、2日にいっぺん自宅の猫の面倒を見るに帰るわ、仕事はいったいどうなってんだと突っ込みたくなるほどの七転八倒の日々を過ごすというのが大体のお話。

犬好きの人は、犬の可愛い仕草や、人間に示す愛情の深さを愛するものであるが、猫好きの人の猫に対する愛はちょっと違う。独特のものがある。猫はご承知のように、愛嬌を振りまかない。なんか勝手に家の中にいる。いつの間にか外へ出ていって、へたをすると喧嘩してどこか傷ついて帰ってきたりする。それは確かに可哀想で飼い主は身も世もなく心配するのだけれど、それとは別に、猫のそうした自分勝手を丸ごと猫好きはいとしんでいるのである。

つまり、犬好きは犬との接触を愛しているのであり、猫派は「そこにそいつがいる」という状態を受け入れているのである。

もちょっと違う言い方をすれば、犬は人間に無償の愛を捧げる生き物だけど、猫は人間に無償の愛を捧げさせる生き物なんである。

町田康の無償の愛は猫好きならではの過剰なものだ。愛なんて文中で一言も漏らさないほど、それは当たり前の、真剣な、生活に根付いた心であり、読んでいる者をはらはらさせたり、苦笑させたり、思わず涙を流させたりする。

が、ここには町田の深い猫愛の顛末が書かれているのではない。生活を犠牲にしてまで猫を大切にする人間誰しもが胸に抱く慈しみの情愛が書かれているのではない。ここに書かれているのは、作家町田康の文章である。文章によって、猫を愛するさまが描かれているのだ。

もうちょっと違う言い方をするなら、「なに」を「どう」書くかのうち、私たちは町田の「どう書くか」に感動させられてしまう。文章力がこの本の命だ。可笑しく、するすると滑り、回転し、ガガガと引っかかり、ズンとはねる。位置もながらの町田の破れ加減の心地よい文章で、さあ猫のことを読もう。


自宅に4匹、仕事場に2匹の猫がいる

拾った猫はかなり弱っていた

伊豆半島の物件の入り口に2匹の幼い猫が

家は決まったもののなかなか一気に引っ越せない事情がある