真面目な人ほど「大卒ニート」になる!? 若年無職者の真実とは?

公開日:2013/11/28

大卒だって無職になる "はたらく"につまずく若者たち

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:工藤啓 価格:900円

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友人達が一丁前に上司への愚痴を言い合い、仕事の大変さを語り合うのを眺めていると、働いてないことへの悔しさがこみ上げてくる。「入社したてに何が分かるんだ」と悪態を付きたくなるが、どんどん社会人らしくなっていく友人達の姿に自分だけ置いてきぼりを食らった気になる。私には「学生」という大義名分があるからまだ良い。だが、学校を卒業したのに職がなかったとしたら、その疎外感は想像を絶するものがあるのだろう。

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現代は大学を卒業すれば、安泰というわけではなく、未だ大卒の3人に1人は無職になる時代だ。彼らは決して世間一般に思われているような「やる気がない」若者ばかりではない。悩み、苦しみ、懸命に職を探したにも関わらず、上手くいかなかったという者も少なくはない。一体彼らは何につまずいてしまうのだろうか。若年無業者の就労支援を手がけるNPO法人「育て上げ」ネット理事長で工藤啓は『大卒だって無職になる――“はたらく”につまずく若者たち』の中でいくつかの事例について触れることで現代の若年無業者の真実に迫っている。

工藤のNPOに相談にやってくる若者は、何らかの問題を抱えている。貧困やメンタルな問題、発達障害、家族間の問題…。抱えている問題は複雑だが、学生時代まで何の問題もなく過ごしてきたのに「社会に出る」ことだけが上手く行かなかった若者も多いという。

「大卒ニートなんて甘え」という偏見を持ちがちだが、本書で取り上げられている若者達は真面目な性格の持ち主ばかり。就職活動の準備を万全にしていたはずなのに、面接が上手くいかなかった者や就職してもミスのないように業務に取り組んでいた者達だ。だが、彼らにとってその真面目さが仇となっている。彼らは失敗することを極度に恐れるが故に新しいことにチャレンジすることをも躊躇している。そして、周りからのプレッシャーを全て真に受けているために燃え尽きてしまっているようだ。

工藤のNPOの集団プログラムを受けて自信を取り戻していく若年無職者の姿は微笑ましい。一般的な面接などの選考ではなく、インターンシップやアルバイトから採用されていく数々の例を見ていると、「話すこと」のコミュニケーション能力ばかりで判断してしまう現代の就活の問題点がここにうっすらと浮かび上がっている気さえする。

就職を巡る若者の現状を正しく理解するために、ぜひ読んで欲しい1冊だ。


就職活動まで何も問題がなく過ごしてきたのに、つまずいてしまう者も少なくはない

多くの事例を通じて、若年無職者の姿を描き出している

若年無職者は周りからのプレッシャーにも焦りを募らせてしまう

次第に「大卒ニート」の偏見を取っ払っていく工藤の姿。物語形式であるためにサラッと読める1冊