企業側丸儲けのあくどいシステムについて学ぼう

更新日:2013/12/17

偽装請負

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 朝日新聞出版
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:朝日新聞特別報道チーム 価格:540円

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いつぞや小林多喜二の『蟹工船』という小説がベストセラーにのぼったことがありました。若者たちの働く環境が、あの作品の世界ととても似ていたものだから、ひどく共感を呼んだのであります。「あー、そうそう、俺もそうなのよ」というわけです。

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『蟹工船』を読んでいたく感心したというか、背筋が凍りそうになったのは、企業が働かせた悪知恵でありまして、あの船は蟹の漁と加工をおこなっているのですが、船だから陸の労働基準法みたいなのに従わなくてもいいんですね。だもんだから、死にそうに働かされる。まったく怖いものであります。

『蟹工船』のブームは去ったけれど、労働環境の厳しさは依然として続いています。というか加速しているんじゃないでしょうか。こうなると考えますね、奴ら。奴らというのはもちろん企業側です。

「偽装請負」っつう手できやがりました。そのことが詳しく取材されている本です。

人材派遣ていうシステムは今でもありました。この場合、ご存じのように、年数に限りがあるとか、理由なく首切りはできないし、残業時間は協定を結ぶ必要がある、などなどの規定があります。そこで、こういう面倒くさいこと、つまり人をこき使うのに邪魔になる規制を全部とっぱらっちまえ、そういう邪悪なアイデアをひねり出したんですな。

まず、会社側は業者に仕事を丸投げする。請負です。請け負ったほうは、本来なら自社に製造に必要な機材などを取りそろえ、納期までに製品を納入するはずですけれど、そうじゃなくて、人を仕事を発注した会社におもむかせ、そこで働かせる。こうすると実態は派遣だけど、表向きは請負業になるという仕組み。指示は本社社員から受けるのに、待遇はほとんど奴隷みたいなもの。保険もなにもあったもんじゃない。

と、こういう労働が横行しているらしいのです。なるほどこれは請負の偽装です。

04年まで製造業への派遣は許されていなかったため、偽装請負に走る企業が続出したそうで、取材班の調べでは、大分キヤノンの工場で06年に、6000人近い労働者のうち正社員は1200人、派遣スタッフ500人、請負労働者4000人という無茶な数字が上がっています。

そのキヤノンや松下といった大手製造業における、信じられないような労働現場の過酷な実態が暴かれているのです。仕事が下火になれば、ゴソッと首切りをおこなってコストをおさえる。労災がおきても派遣会社に一切の処理を押しつけられる。派遣会社は保険に入ると手取りが減るよなどといって入らせない。読めば読むほどつらくなるのでありました。


ニコン熊谷製造所で働き自殺に追い込まれた青年を切り口に始まる

偽装請負の実態はあまりにも過酷だ