林修先生のスゴさに脱帽の新刊、読むなら今でしょ!

公開日:2013/12/3

受験必要論 人生の基礎は受験で作り得る

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 集英社
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:BookLive!
著者名:林修 価格:1,028円

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東進ハイスクールのCMの名ゼリフ「今でしょ!」が見事流行語大賞に輝き、2013年は有無を言わさぬ大ブレイク! 今、誰もがその言葉を聞きたい、林修先生の新刊がこちらです。その名もズバリ『受験必要論』。「受験勉強はかくも人生に必要なものである」と、現役受験生や受験生をもつ親世代に向けて、熱い言葉がくり出されます。

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柱はあくまで「受験勉強」ですが、もちろん大人世代も楽しめます。ものの考え方をどう築くのか、林先生の持論を参考にしたり、はたまた『子ども百科事典』全8巻を丸暗記、因数分解などは見た瞬間に答えが出るところまで勉強し尽くすなど、他者の追随を許さぬ少年時代の林先生に圧倒されたり。あるいは、東大法学部を卒業後、日本長期信用銀行に就職、わずか5ヵ月で退社し競馬ざんまいの末、火事を起こしたり投資に失敗して1800万の借金をつくった、破天荒な20代の先生に驚きを感じるもよし。

そんな、学ぶ姿勢においては鉄人のような林先生のおっしゃる「勉強」とは、自分に合った勉強法を見つけ出していくことが一番の基礎。先生にやりなさいと言われて「は~い」と従うのは、決して勉強ではない。学ぶときに必要なのは「主体性や批判精神」である。そのスタンスは「学問」や「考えること」におけるセオリーともいえるでしょう。ちなみに、同じ本を何度も読み理解を深めることが大好きだった林先生は、小2から小6まで毎年、宮沢賢治の『注文の多い料理店』で読後感想文を書いたのだとか。そのココロは「読むたびに感想が変わる。前には気がつかなかったことに気づけるから」。自身の体験に裏付けられた論には、説得力を感じます。

さらに「受験勉強」の目的とは、「創造」と「解決」能力を高めることだとも。なぜなら社会に出ると、受験勉強とは違って、答えがあるかどうかもわからぬ事態にぶち当たることがままあり、私たちはその「問題」を解かねばなりません。けれど学生時代に、受験勉強という「答えのある問題を解く練習」をしておくと、答えのない問題を解く力が、自然と培われてゆくのだそう。学びは無形の財産というわけです。

受験勉強の重要性を説くその一方で、大切なのは「ちゃんと戦って、しっかり負けることだ」と林先生。戦わなければ負けないけれど、自分自身と向き合うこともありません。勉強で負けるのなら、社会に出たとき別の「物差し」で勝てばいい。そう考えることでおのずと自分と向き合い「では、どこならば勝てるのだろう」と、自分にふさわしい場所を探すようになる。つまり偏差値以外の「物差し」ももつべきだと、現在の受験制度に一石を投じるあたり、クールな俯瞰の視線を感じます。

勉強には、フライングもスピード違反もありません。小説『大地』の著者、パール・バックの言葉「私は気分が乗ってくるのを待つことはない。(中略)何よりも大切なことは、まず着手すべきことを知るべきだ」。実はそれを生徒たちに向けて、ひとことで言い表したフレーズが、あの名ゼリフ「いつやるか? 今でしょ!」なのだそうです。そんなつながりがあったとは。ドヤ顔の理由も納得ですね。

ともかく、勉強に限らず仕事でもなんでも、やろうと思うことに関して「気が乗らない」とか、言い訳をつけているようでは甘いのです。「やろう」と思ったら遅疑逡巡せず、直ちに始めることで大きく飛躍できると、先生はエールを送っています。


受験科目にしろなんにしろ、「人生の中で“常に勝てるもの”をひとつもっているとゆとりが生じて、生きやすさが違う」と林先生。自身も「勝てる」仕事として、予備校の現代文講師を選んだそう

ネット上で話題になった、2013年の麻布中学の入試問題。「ネコ型ロボット『ドラえもん』は優れた技術でつくられていたが、生物として認められることはない。その理由を答えよ」という問題、あなたならどう回答します?

「東大に簡単に入れるコツはありますか?」と問われて「簡単なコツを聞く、その質問自体が、東大に失礼に思われるのですが」と切り返す。この本では、率直かつロジカルにばっさりと斬る、クールな横顔もうかがえます