遺体の最後の風景を幻視する天才法医学士のミステリー
公開日:2013/12/16
屍活師女王の法医学 〈1〉
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : 講談社 |
ジャンル:コミック | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:杜野亜希 | 価格:432円 |
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「屍(しかばね)は活ける師なり」
作中でつぶやかれるこのフレーズがこのコミックのキーワードである。
本当は臨床医になりたい犬飼一が成績不振のため意に染まぬまままわされた法医学教室で出会ったのは、眠っているときこそ白雪姫のような清楚な美女だが、目を覚ませばひどくとぼけたキャラクターの死体にしか興味のない天才解剖医・桐山ユキだった。2人は、さまざまな案件の解剖医を担当しながら謎に満ちた事件を解決していく。
我々をゾクッとさせるのは、桐山が解剖のさなか、遺体の死の直前の風景を幻視してしまうという設定だ。彼女は死者の最後の思い、姿、そのまわりの様子から、死の真相を読み取るのである。そのときつぶやかれるのが冒頭に書いたフレーズだ。
「屍は活ける師なり」
遺体がすべてを語ってくれる。それが彼女のたったひとつの、そして強い信念なのである。
とはいっても、本作は超能力探偵ものではない。
死者が語ってくれたあまたの事情を、解剖所見によって裏付けていく生粋のミステリーなのだ。
内臓の変異、擦過傷、体に付着した異物、また死斑などの皮膚の異常から死の真相をじわじわとあぶり出していくプロセスは圧巻だ。司法解剖がどのような手順でおこなわれるかの知識も興味深い。
桐山ユキの人を食ったキャラクターが今後どのような魅力を見せてくれるのか、また彼女に出会ったことで臨床医をめざす犬飼にどのような変化が起きるのか、じっくりと続刊を待ちたい。
かの上白雪姫のような美女だった
それも彼女が目を覚ますまでだった
犬飼のアルバイト先の女性縊死体が最初の検案になる
解剖の場面はリアルに
キーワードとともに犬飼も幻視を体験する