あの頃問題視された「現代っ子」が大人になると…
公開日:2013/12/21
本作はちょぴっと古い。だけども、時が経つと本来それ自身が持っていた価値と全く違う価値が生まれてきたりして、今さら電子版になった意味を何となく見出したとき、私はぞわっとした。
2005年に出版された本作は、いわゆる「現代っ子」の出現に焦点を当てた子供と関わる大人のための本だ。国際化によって得た個人至上主義は教育にあますところなく反映され、自分と他人を比べない「俺様」的な子供が多く出現するようになった。教師である著者の経験から得たこの感覚を通し、古い自分たちには到底理解することのできない彼らを分析し、現代の問題点を語る。そういったこの本は、出版されて10年近く経っている。月日が経つのは早いものだ。
その頃本作を読むはずのない「子供たち」が今、立派な大人として社会に出ている。問題視されていた「現代っ子」は、もう教育の産物として大人に評価される立場ではない。そして今さらに、本作が存在するもうひとつの意味が生まれる。大人になった「現代っ子」が、客観的に自分たちを知るための本となり得たのだ。
私は「俺様化」した若者のひとりであるし、同級生も、ちょっとした先輩も、後輩だってそう。かなり否定的な目線から、つくられた自分たちを見る。へんてこな気持ち。でも、ひとつの自分という像が追加される感覚は、あまり得られるものではない。あの頃の「現代っ子」にこそ読んでいただきたい1冊だ。
子供たちである私…。ちょっと耳が痛い
なるほどの育て方
変えてもらうんではなく、変わらなければ
(C)諏訪哲二/中央公論新社