祝・ドラマ化! 刑事vs.犯人の知恵比べに酔う、女性コロンボの活躍

小説・エッセイ

2014/1/6

福家警部補の挨拶

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 東京創元社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:大倉崇裕 価格:540円

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コロンボが好きな人。古畑任三郎ファンの人。お待たせしました。あのタイプの新ドラマが登場だ。そう、まず犯人と犯罪場面を見せ、そのあとで刑事が謎を解く。見どころは刑事と犯人の知恵比べ。そんな倒叙スタイルのミステリが『福家警部補の挨拶』である。今度の警部補は女性で、檀れい演じる福家警部補。いったいどんな警部補なのか? ドラマを待てないあなた、原作を読みましょう原作を。

福家シリーズは現在3作。いずれも短編集だ。そのすべてが電子化されているが、ここではシリーズ第1作の『福家警部補の挨拶』を紹介する。主人公の福家警部補は眼鏡をかけた小柄な若い女性。とても警部補という階級の刑事には見えない。そのため犯罪現場に言っても、学生や記者と間違われ見張りの制服警官に中に入れてもらえないこともしょっちゅう。被疑者から「責任者を呼べ」と言われ「私が責任者です」と返すのがお決まりのパターン。ただこのあたり、壇れいさんのインタビューによると「私が演じますので年齢も上げていただいて(笑)」とのことなので、もしかしたらドラマでは設定が変わって、原作だけのお楽しみ場面になるかも。

ただ、シャープな目のつけどころと、犯人との会話からヒントを探す手法は原作もドラマも同じはず。壇さんもセリフの多さには驚かれたご様子だ。現場に残されたわずかな異変、容疑者の何気ない言葉、そんなものから福家は真実を探し出す。そのくだりは、コロンボや古畑が好きな人にはたまらない。

第1作『福家警部補の挨拶』には4作収録されている。「最後の一冊」は図書館で起きた殺人事件を、「オッカムの剃刀」は犯罪学のスペシャリストによる殺人事件を、「愛憎のシナリオ」はライバルを殺した女優の意外な動機を、「月の雫」では酒蔵での殺人事件を、それぞれ福家がネチネチした尋問としつこい現場検証を通して解き明かす。どれも読みどころがあるが、この中では「オッカムの剃刀」が出色だろう。犯罪捜査の現場を知り尽くした専門家による計画殺人は、その動機も含めて二重三重に読者を煙に巻く。

毎回同じパターンでありながら飽きないのは、バラエティに富んだ舞台設定はもちろん、物語がきちんとしているという点が大きい。金や色欲だけでない動機が人間ドラマとして厚みを与えている。犯人も総じてスマートだ。ちなみにドラマ初回放送の「失われた灯」の犯人は人気脚本家で、演じるのは反町隆史(倒叙ものは犯人をばらしてもネタばれにならないからいいなあ)。本編はシリーズ2作目の『福家警部補の再訪』に収録されているので、気になる方はそちらも併せてどうぞ。