こんな警察官僚、いてほしい! ドラマ放送直前、各賞総嘗めの原作をぜひ

小説・エッセイ

2014/1/12

隠蔽捜査

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 新潮社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:今野敏 価格:648円

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杉本哲太&古田新太と言えば、2013年の話題をさらった「あまちゃん」のキーパーソン。そのコンビがまったく違った顔で画面に戻ってくる。杉本哲太は生真面目な警察官僚として、古田新太はその同期の警視庁刑事部長として。原作『隠蔽捜査』は、吉川英治文学新人賞・山本周五郎賞・日本推理作家協会賞など数々の賞に輝いた今野敏の大ベストセラー・シリーズだ。ドラマが始まる前に、原作をご紹介しよう。

ここからは小説の話。ドラマとは違いが多々あると思うがご了承を。

主人公は東大卒のキャリアで、現在は警察庁長官官房総務課長を務める竜崎。ばりばりのキャリアである。この竜崎のキャラクター、読み始めてすぐに「はあ?」と思うことだろう。なんせ「東大以外は大学じゃない」などと考えているのである。同期の伊丹が警視庁刑事部長で現場に出ているのを知り、「所詮は私立大学出だから」などと考えているのである。子育ては妻に放り投げて何の疑問も持たないし、娘の結婚話すら「任せる」で終わらせる始末。なんだこの男は。

ところが読み進むにつれて彼の印象がぐんぐん変わる。彼が変わるのではなく(竜崎は驚くほど終始一貫している)、読んでいる側が彼を理解し、その評価が変わるのである。たとえば、ネタバレにならないようにセリフをひとつだけ紹介しよう。彼が家庭を顧みず、妻に任せっきりなのは怠惰だからではない。彼の主義があるからだ。それがわかるセリフがこれ。

「俺は国のことを考える。おまえは家のことを考えてくれ」

つまり、税金を使って勉強させてもらった東大出のエリート官僚には、それだけの責任がある。何よりその責任、責務を優先し全うすることが国家公務員の義務である、と至極真面目に考えているのである。ここあるのは、あらまほしき公務員像なのだ。

物語は冒頭で殺人事件が起き、それが連続事件へと展開していく。竜崎は警察庁の役人としてマスコミ対応などを担当するが、その途中、警察の権威が失墜しかねない事態に遭遇。ほぼ同時期に竜崎の家庭内でもある事件が起きる。保身に走ろうと思えばいくらでも走れる立場にある竜崎。キャリア官僚としての誇りと、父としての威厳。その両方を守るにはどうすればいいのか。彼の葛藤は読者を引きつけて離さない。彼の決断を固唾を飲んで見守ってしまう。

実はミステリとしてもかなり魅力的な構造を備えているのだが、敢えて奇を衒わず、テンポよく問題の所在をクリアにすることで極めてリーダビリティの高い一作に仕上がっている。個性的な人物造形がさらにそれを後押しする。一気読み必至のエンターテインメントだ。1冊読んだらシリーズを読破したくなること間違いなし。現在シリーズ5冊とスピンオフ1冊すべて、電子化されている。