やさしさにあふれた青春もの!
更新日:2014/2/24
やさしいセカイのつくりかた(1)
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : KADOKAWA |
ジャンル:コミック | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:竹葉久美子 | 価格:615円 |
※最新の価格はストアでご確認ください。 |
13歳で渡米。飛び級の末19歳にして大学院で研究していた天才学者の朝永先生が、まあ大人の都合で研究を続けられなくなり帰国。不本意ながら、女子校に勤務することになるのだが、そこには問題児がたくさんいてさあ大変。というのが公式サイトの紹介文です。これはこれで正しいし、若い男の子である朝永先生を女子校にぶち込む設定がある以上、「女子高生たちとのドキドキ学園生活」という風に落ち着くのもわかります。でもこの作品には、もっと多面的な魅力があるのにな、と思いました。
『やさしいセカイのつくりかた』というタイトル、また各話のサブタイトルから、理数系ものなのかな? と思ってしまうのですが違います。小説になりますが『神様のパズル』とか、ああいう要素は含んでいません。強いて挙げれば、朝永先生の教え子となる葵さんは数学の天才で、朝永先生と物理、数学でつながっていくという話ではあります。
けれど、ふたりの間に横たわる問題は、己の知識欲に素直な朝永先生に対し、才能を隠して生きようとする葵さんという、規格外である自身に向き合うそれぞれの姿勢だったりします。理屈より心の問題。線の細い絵柄と相まって、紺野キタさんの『ひみつの階段』のような魅力があります。
さらにこの物語、主人公である朝永先生とヒロイン葵さんのラブストーリー、というくくりでは収まりません。いろいろあって教師不信だったけど、朝永先生に惹かれていくハルカさんの存在などは強烈です。『ダイの大冒険』でいうと、天才の葵さんがダイなら、見た目ギャルだけどすごく純情な乙女のハルカさんはポップといったところでしょうか。
実際、1巻のおいしいところは、ほとんどハルカさんのエピソードだし。ハルカさん以外にも、見た目ふつうなのに本当は問題児の冬子さん、真性腐女子の香代さんなど、巻を追うごとに各人物の魅力が掘り起こされていきます。もちろん、アルコールで豹変する百合音先生もけしからんほど素晴らしいですよ。正座待機で続刊を待ちたい作品です。
冒頭、ハルカさんの拒絶反応は相当なもの
一方、葵さんは豊富な専門書に惹かれて準備室の常連になる
でも葵さんには、朝永先生のように生きられない理由がある
とんがった生き方を選んだ朝永先生の見せ場!