隅々まできっちり描かれた硬質なフィクション

公開日:2014/1/27

サイレーン(1)

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:山崎紗也夏 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

作者の山崎さんはペンネームを何度か変えているのですが、トータルで画業20年のベテラン作家なんですね。この『サイレーン』という作品にも、ベテランならではの技術が注がれているのを感じました。

advertisement

話の大まかな筋ですが、警察ものです。とはいっても、毎回事件が起きて主人公の、猪熊さんと里見くんコンビが解決して、などという刑事物のお約束ではありませんよ。警察サイドに読者を誘導しておいて、一人のサイコパス(反社会性人格障害)の動きを追っていくような作りになっています。

そして見事なほど鮮やかに、冒頭の事件で猪熊さんと里見くんは、事件の中心人物であるキャバ嬢のカラと接触しているんです。こうなると、物語のよくあるパターンとしては容疑者カラ対猪熊、里見の追いかけっこに落ち着きそうなものですが、それもまたいい意味で裏切られます。

読者はカラの罪状を嗅ぎ取っているが、猪熊さんと里見くんはそんなこと知らない。ふたりは機動捜査隊の警官であり、警察署の中で与えられた役割を日々こなす公務員なのです。犯人が捨てたと自供すれば、藪の中で拳銃を探し、市民プールに非番で出かけても盗撮の疑いがあれば応援を呼んで捕まえる。今、カラのことをサイコパス、反社会性人格障害のキャラクターだと書きましたが、猪熊さんと里見くんは真逆。まさに警察という社会の中で生きているのです。綺麗な対比の構図ですね。

絵柄は硬い感じです。表情が極端に変わるようなタイプではなく、やや劇画チックです。しかし猪熊さんと里見くんの職場の同僚としての会話、恋人としてのプライベートでの掛け合いを追っていくと、次第にキャラクターが生き生きと動き始めるのが感じられました。顔芸などというのも技能ですが、そういう一発芸ではなく、こうしてストーリーや会話でキャラクターをみせる技術はさすがです。


いきなりカラオケ店の廊下で遭遇する里見くんとカラ

猪熊さん、酒強すぎです…

深酒も何のその。颯爽と出動!

そして事件現場にいたのは、カラ…