その島にはかつて3人の魔女がいた…可愛いけれど残酷な大人のメルへン

公開日:2014/2/3

ヴォイニッチホテル(1)

ハード : PC/Android 発売元 : 秋田書店
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:道満晴明 価格:525円

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 著者の道満晴明(どうまん せいまん)は、『ぱら☆イゾ』や『ニッケルオデオン【赤】』などで独特な空気感の作品を描き、根強いファンを持つマンガ家です。幻想的というよりは幻覚的で、可愛らしいけど毒のある、コメディなのに物悲しい。そんな個性的な世界観と空気が魅力の『ヴォイニッチホテル』は「道満ワールド」がぎゅっと凝縮されており、彼の画風を味わうのにはうってつけ。メイドあり、殺し屋あり、ヤクザあり麻薬あり魔女、ロボ、悪魔、殺人事件なんでもござれの愉快で理不尽な白夢中のような作品です。

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 話の舞台は太平洋南西に浮かぶ小さな島、ブレフスキュ島。内乱やマフィアの横行で寂れている観光島で、幽霊が出ると噂のヴォイニッチホテル。そのホテルが立つ場所は、かつてスペインの侵攻を受けたときに、最後まで抗い戦った「魔女」が眠る神聖な森があった場所でした。そんなホテルに長期滞在をするのは、マンガ家、殺し屋(ホモ)、麻薬の売人に潜入捜査官など、一癖も二癖もある曲者ばかり。

 そんな曲者のひとり、クズキ タイゾウは元ヤクザの会計で、所属していた組から身を隠すためにヴォイニッチホテルへとやってきました。そこで始まるメイド、エレナとの恋。そのきっかけは、彼女の右目に義眼を入れたこと! 驚きました。今まで見たことのない斬新すぎる恋の始まりでした。そしてこのエレナ、義眼刺青巫女さん属性持ちな美少女だけでは終わりません。その正体はなんと…! これ以上はネタバレになるので、ぜひ読んで確かめてみてください。

 本作はおおよそ10ページ前後の連作短編オムニバス。ヴォイニッチホテルの滞在客や関係者たちが各々思い思いに過ごす様子が時にはコメディに、時には不条理に描かれ、それが全体を通してみると1つのストーリーになっている、という形の物語。本作の節々で披露される緩急の効いた毒は、民話に漂う残酷さと無常さをイメージさせます。日本昔話などが好きな人なら、きっとハマること間違いなし! な、作品でした。


ヴォイニッチホテルのメイド、エレナ(黒髪)とベルナ(金髪)。初めて読んだときは気づかなかったけれど、エレナが持ってるシーツに血痕ついてるような…気が…

体調を崩したクズキを気遣ってエレナが用意したのは流しそうめん。曰く「日本の伝統的な流動食」のつもりらしい。たしかに流動していますが何かがとってもずれています

義眼をはめることで始まる恋。冷静に見れば異質すぎるのに初々しく見えてくる不思議

かつて島で崇められた三姉妹の魔女。日本で言う都市伝説の類かと思いきや…?