恐怖を通り越して黒い哄笑を呼ぶホラーコミック

公開日:2014/2/6

三条友美恐怖作品集 きりきりぎったん

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : ぶんか社
ジャンル:コミック 購入元:電子貸本Renta!
著者名:三条友美 価格:105円

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 昨年『死霊のはらわた』という映画が公開されたが、あれはリメイクである。オリジナルの『死霊のはらわた』は『スパイダーマン』で有名なサム・ライミ監督の手になるものだ。人里離れた山小屋にやってきた六人の男女が、地下にしまわれていた呪いの書を読み上げて、死霊を呼び覚ましてしまう。次々と6人にとりついた死霊が襲いかかってくるのを、残されたものが必死で逃れようとするのであるが、その方法はひとつしかない。とりつかれた人間をバラバラに切断するのである。

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「はらわた」というくらいだから、その描写はスプラッターもほどほどにしろ、と言いたくなるくらいすさまじいものだ。血みどろ大会である。

 故・中島らもはこの映画を見て、スタッフは大笑いしながら撮ったに違いないと言った。僕もそうだと思う。その過激ぶりはほとんどスプラッターを通り越して、子供の水遊びに近い。「アハハ、くっだらねー」とはしゃぎながら撮影したに違いないのだ。

 表題作をふくめて12本の作で構成されたこのコミック『ぎりぎりぎったん』も、それに近い奔放さを発揮している。とにかく血まみれになることに眼目があるのだ。理屈なんて関係ない。

 女子高生が3人、森の中に捨てられていたマネキンに「きりきりぎったん」という名前をつけて願いを叶えてくれる神様にする。ヒロインの娘が願い事をすると、まあだいたい想像のつくように、このマネキンに霊が宿り…。っつう話だ。

 なにはなくとも、内臓感覚、グチュグチュのビチョビチョ三昧。血だらけはホラーを突き抜けてブラックな哄笑を誘うんである。

 ふたつの特徴がある。ひとつは都市伝説が支配していること。登場するのが女子高生や若い女性であるのは、都市伝説のリアリティを増すためだろう。都市伝説が本当になったときの恐怖を繰り返し描く。もうひとつは、どうも作者には醜形恐怖があるのではないか。どのストーリーにも、出現する異形のものは必ず顔がドロドロだったりズタズタだったり崩れていたりするのだ。顔が怖いのが一番怖いという考えだけではちょっと説明しきれない過剰さを感じる。

 とまれ、ホラー好きの僕としては充分笑った。よろしければどうぞ。