素晴らしい、でも載せていいのか? 編集部を迷わせた話題作が連載解禁!

更新日:2015/9/29

聲の形(1)

ハード : PC/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:大今良時 価格:420円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 編集部内でも読者の間でも大きな反響があった、ということは聞きかじっていました。別冊マガジンに読み切りが載った時には『進撃の巨人』、『惡の華』、『どうぶつの国』など、並みいる主力連載を抑えて見事読者アンケート1位を獲得した『聲の形』。どんなものかと軽い気持ちで読み始めれば、あれよあれよという間にハートフルボッコです。ろうあ者に対するいじめを通して人間のエゴや醜さが濃く描かれており、1巻限定で言えば社会派の内容。それが正の方向であれ負の方向であれ、読めば強烈に心動かされること間違いありません。

 石田将也(いしだ しょうや)は退屈が嫌いで、刺激を求めては友人を誘い高所から川へ飛び込むなど、後先を考えずに突っ走る性分。しかし友人が塾通いを期に度胸試しに参加しなくなり、退屈を持て余していました。そんなある日、転校生がやってきます。転校生の西宮硝子(にしみやしょうこ)は聴覚に障害を持つ少女。ノートで行う会話以外はいたって健全に行動できるのですが、これが少しずつクラスに負担を重ねさせてしまうことに。黒板に向かっている先生が何を言っているかわからない、先生が何を言っているのかクラスメイトに尋ねる、返事を書いているあいだにクラスメイトは先生の説明を聞き逃してしまう、など。そして転換期となったのは合唱コンクールです。耳が聞こえないため上手く音程が取れない硝子に、ついに不満が爆発。将也はクラスの中でも先頭にたって硝子をいじめ始め…

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 『聲の形』の何がすごいのかというと、人間描写のひとことにつきます。刺激が欲しいだけでどんどん虐めをエスカレートさせる残酷さ。自己保身に要領がよく、いじめを助長させていた担任教師。いじめが発覚した時に将也を尻尾切りにしたクラスメイト。理想論過ぎて現実の負担が見えていない聞こえ教室の女性。娘よりも自分が大事な母親、などなど。誰しもが否定したい、けれどきっと誰しもが心の内に持っている汚さや醜さの断片をこれでもかと突きつけられて、読み進めるうちにお腹がキリキリしてくるほどです。いま学校に通う10代にこそ、読んで考えて欲しい1冊でした。


橋から川に飛び込む度胸試しの後、将也が家に帰ると待っていたのは母の悲鳴。周りからの将也の評判は「元気な子」

度胸試しの途中で盗まれた靴を追うてんやわんやでボコボコに殴られた将也。退屈しなかったとご機嫌な将也ですが、友人二人の反応に今後の展開を知って改めて読むと…

「耳が聞こえません」硝子との出会いを将也は「異星人」と出会ったようだと感じます

ここからはじまる胃痛展開…お腹を抑えつつもページをめくる手が止まらなくなる不思議