ご法度の国でビールにワイン! その気になればどこでだって、飲めるんです

小説・エッセイ

公開日:2011/10/13

イスラム飲酒紀行

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 扶桑社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:高野秀行 価格:925円

※最新の価格はストアでご確認ください。

自他共に認める大のお酒好き❤ 昼夜問わず、機会があればいつでもウェルカム、アルコール!
食事をする、イコールそこには何かしらのお酒があって当然。お茶をする、このシーンでもまたよほどのことがない限り言葉通りカフェを頼むことなど稀なので(笑) と素性を明かせば、この本を手に取った動機もご理解いただけるのでは。

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「飲酒」と「イスラム」、まずはこの、およそそぐわぬ2つの単語を結び付けたタイトルに大いにそそられ、思わずぽちっと買い物かごへ。まさに、ジャケ買いならぬタイトル買いの1冊だったのだけど、これがアタリ!

著者の本分は辺境への旅と探索で、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」ことだそうだが、その本業へ注ぐ情熱に対峙する左党でもある。なにしろ、序章+8章の冒頭は必ず「私は酒飲みである」、この一句から始まるのだから(笑)。そんな大の愛飲家である著者が、仕事やプライベートで訪れたイスラム圏のあちこちで、ご法度のアルコールを求めて彷徨い、標的をゲットするまでの成り行きから、その地の “建前”と“本音”をひもといていくのだけれど。

文体はライブ感があり、笑いを誘う場面や表現が多々。現地に関する造詣の深さと旅慣れている様が容易に窺える内容ながら、終始アルコールに傾倒。徹頭徹尾、ブレがない(笑)。なにせムスリムにとっては、酒を飲むことはもちろん、取り扱うのもNG、そんな土地でどうにかこうにか“命の水”を見つけ出してしまうのだ。その執着心たるや、その着眼点たるや、いやはやあっぱれ。酒飲みならではの観点が、今までにない見解を示してくれている斬新な切り口の紀行モノであり、イスラム圏を題材にした書籍の中では異色の1冊といった感。

そういえば、好きが高じてワインバーを開いた、通年痛飲系の友人がパリにいる私を訪ねてきた時のこと。再会したはいいが、どうにも顔色が悪い。何があったのかと心配したところ、寸前まで滞在していたモロッコでラマダーンの時期にまんまとぶつかり、禁酒を余儀なくされるという、彼にとっては地獄の数日を過ごし、ついに体調を崩したのだという。その友人も著者同様、休肝日など不要とする質ゆえ、相当な打撃を受けていた。パリならば、私が偏愛する泡(シャンパンの類)もワインも無論潤沢、そこらじゅうで安価かつ上質なものが入手可能だ。当然、その夜はがぶがぶ飲んだ。禁酒の呪縛から抜け出した友人は、水を得た魚のように目を輝かせ、ワインを買い込み気前よくばんばん空けてくれたものだから、翌朝見たら床に5~6本の空瓶が転がっていたっけ。余談ではあるけれど、現にイスラム圏で酒難民となった友人がいたことも、この本を読んでいて親近感がわいた所以かも。

ちなみに、著者も文中で幾度となく念を押しているが、友人も、私もまたアル中ではない。お酒が、大好きなだけなんです。これに同感してくださる方はきっと、この本がツボにハマるはず。


単なる酒飲みではないことが読み取れる、著者のプロフィール。好きなことをとことん突き詰めるユニークな発想の持ち主で、臨場感あふれる等身大の文章が持ち味だと察する

本文もそうだが、残念なことに、指でスクロールして拡大したり、といった機能は無い模様。「右拡大」で該当する国は、マレーシアとバングラデシュ。それにしてもあちこちを飛び回り、貴重な体験をしている

先ほどの地図の「左拡大」を選択して飛ぶページ。アフガニスタン、パキスタン、イラン、カタール、シリア、トルコ、ソマリランド、チェニジュアと、“辺境作家”ならではの国が舞台となっている

購入当初のベーシックな状態。文字の大きさやフォント、文字組み、バックの配色など、ある程度設定ページで選べる

個人的に、書籍は“縦書き”で読みたい故、設定変更。慣れているからか、この方がページめくりも断然スムーズ。「Wikipedia」や「Google」に飛ぶ機能もあるようなのだけど、なにぶん、文字選択が1字分しかできず、どうにも検索のしようが無かった。別の機会に試してみたい

著者の相棒、カメラマン森清氏の写真も収録されているのだが、カラーの被写体は酒に隔たらず、人物から風景、料理…、“紀行”らしいカットが中心。一方、各章に収められているモノクロは、著者が満面の笑みでアルコールを手にしていたりと、文章とリンク。ドキュメンタリーの体裁で、これまた一興