憑かれたいコックリさんナンバーワン（当社比）

　イケメンなのである。そして、モフモフかつ肉球がぷにぷにだそうなのである。あまつさえ、割烹着装備で「1日3食50品目」を実践した手料理を作ってくれ、掃除洗濯も完璧にこなしてくれるおかん属性なのである。何の話かというと、主人公の少女・市松こひなにとりつくコックリさんの話なのである。

　しかも、こひなにとりつくのはコックリさんだけではない。1巻の時点で、男女どちらの性別にもなれるので「百合ルートとノーマルルート、お好きな方をお選び頂けます！」とにっこり笑う、美形の狗神さん（しかもちびキャラに変身すると、パウダービーズクッションすら足下にも及ばないマシュマロボディになる）もとりついてきて、こひなに惜しみない、狂気すらにじませるほどの愛情を注ぎまくるのである。

　なんだよ！ いわゆる逆ハーレムものかよ、と思った貴方は大いに間違っている。このマンガに出てくる登場人物は、パーツパーツを取り出せばそれなりにかっこいい・かわいい属性を持っているものだが、それを超えてありあまるほどの残念さをも抱えているクセの強いキャラばかりだからだ。

　コックリさんは、おかん属性が過ぎてしまい、ギャグマンガの中の「ひとりだけ被害を被る常識人キャラ」になってしまっている上に、結構なガラスハート持ちなせいで、その状況にいつも胃を痛めたり、モフモフな毛に10円ハゲを作ってしまっていたりする。狗神さんはこひなが好きすぎて、もはやストーカーの域、「こひな様 or DIE」とまで言い切るほどにこひな以外のことに興味がない、というか憎悪の対象レベル。そしてこひな自身は自らを「人形」と言い切ってその体の設定で行動し、学校でいじめられようと、ぼっちであろうとひたすらわが道をゆき、ただひたすらカップ麺だけを偏愛する、ありていに言ってしまえば「残念すぎる子」なのである。

　こうしてイケメンに囲まれて生活する少女なのにラブの匂いは香ってもこず、ただ残念なもののけたちが増えていき、だんだん疑似家族みたいな感じになっていくギャグマンガ、それがこのマンガなのである。

　それにしてもこんなコックリさんなら、ぜひともとりついてほしいもんである。肉球をプニらせてくれて、さらに耳をモフモフさせてくれるだけでもいいから！ ぜひ！