恋愛でもビジネスでも役立つ! 名作に学ぶコミュニケーション術
公開日:2014/3/2
「文学が世の中の何に役立つのだ」という非難を耳にするたび、そういう言葉を発する人間こそ、本当に世の中の役に立っているのだろうかと少し心配になる。何万人もの人の心を動かしてきた本には、実生活にだって役立つ何かがあるに違いない。私には文学は人と関わるすべを教えてくれる気がしてならないのだ。
晴香葉子氏著『もてる!『星の王子さま』効果 女性の心をつかむ18の法則』は『星の王子さま』を心理学的に分析し、実生活に役立つヒントを伝えている。サン=テグジュペリ著『星の王子さま』といえば、世界で聖書の次に読まれている本などともいわれているほど名高い児童文学だ。
単独飛行中、飛行機の故障でサハラ砂漠に不時着した飛行士が、星の王子さまとの不思議な出会いを果たすこの物語には、哲学的な名言が多くちりばめられている。「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」。晴香氏は、人の「内面的魅力」も目には見えないということを述べている。私たちは目で見えない魅力を、コミュニケーションを通して、伝えなくてはならない。『星の王子様』を教科書として、自分の行動を見直すと、自分の良いところが伝わりやすくなると晴香氏はいう。
気になる人ができた時、人間は相手にどう話し掛けていいのか、悩むことだろう。人と人との間にある壁を壊し、緊張を解していくことを「アイスブレイク」と呼ぶが、王子は彼自身が相手との間に壁を作らない純粋さを持っている。晴香氏は、王子のように緊張することなく話し掛けることが警戒を解くことにつながるとしている。頭にイメージするものは表情に影響を及ぼすから、どうしても緊張してしまう場合は『星の王子様』の世界を想像しながら話しかければ良い。堅苦しくなく、無駄なく少しずつ親しくなれる話題を見つけだそう。
王子は、飛行士がずっと持ち歩いていた誰にもわかってもらえない絵(ゾウが飲み込んだウワバミの絵)を一度で理解し、飛行士を驚かせた。このような「この人は違う!」と印象づける瞬間も大切だと晴香氏はいう。相手の気持ちをくみとり、察することを「共感的理解」というが、「共感的理解者」の存在は精神を安心させる。相手の様子を観察し、発見したことで相手を褒めるようにしよう。
星の王子さまは想像力や観察力に長けている。そして、穏やかな口調でユーモア溢れた発言をしていく。彼から学ぶことはとてつもなく多そうだ。人との関わり方に対するヒントが名著には秘められている。ビジネス本と合わせて読めば、社会人として大きく羽ばたけそうな気がする。男女問わず全ての人へ、ぜひ読んでほしい1冊だ。
『星の王子様』はコミュニケーションに役立つ
「孤」を持つ人には魅力がある。星の王子様もそのひとり
悲しくなったときは、セルフコントロールが大切
『星の王子様』から学べる18のコミュニケーション
星の王子様の挿絵も可愛らしい
(C)晴香葉子/講談社