「償う」とか「赦す」とか。原田マハが仕掛けるハンカチ必須の1冊とは?

小説・エッセイ

公開日:2014/3/6

まぐだら屋のマリア

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:原田マハ 価格:1,050円

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 久々に大文字の「ヒロイン」が出て来た物語だったなーというのが読書直後の感想です。鼻水と涙を流しながら読みました。読み始めはなんとなく信用しきれずにいたのです。料理を作る女。食事の描写。吉本ばななの『キッチン』以降、『食堂かたつむり』とかこういう「癒し系」な食卓を巡るストーリー多くない? などと無意味に批判的になったりして。

主人公、25歳の紫紋は、上京し、一流料亭の下っ端を務めるも、食材の使い回しや賞味期限の偽造などの料亭スキャンダルに巻き込まれ逃げるように最果ての地「尽果」にやってきた。そこには「まぐだら屋」という食堂があり、「マリア」という薬指のない、2つの位牌と一緒に一人暮らしをする女がひとりで切り盛りしている。若い男はこのミステリアスな中年の女の店を手伝うようになる、という最初のシチュエーションから十分に読者を引っ張ってくれます。

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 この物語に出てくるみんなに影があるんです。果たしてマリアはどこの出身でなぜ薬指がないのか、この店のオーナーである「女将」に彼女はどうしてそこまで嫌われているのか、まったく分からず。雪が降り積もり、外界から閉ざされるような冬に物語が進んで行きます。

 紫紋同様、突然現れた20歳の「丸弧(マルコ)」は「母親を殺して来た」という。そしてもうひとり「与羽(ヨハネ)」という男が現れる。要するに、聖母マリアを囲むように12使徒のうちの「数人」が集まってくるわけです。そして、聖母マリアのような女主人のマリア、本当に聖母なんでしょうか?

 大どんでん返しがあって、ぎゃっと驚かされるのかもしれない、と思いながら、マリアと紫紋の作る料理の真摯さから、絶対彼らには裏切られないでしょう、という安心感もあり。後半30ページぐらいで物語が急転。そこからずっとジュルジュル鼻をすする感じです。生きて苦しみながら罪を償う人々の物語。泣けます。紫紋とマリアの結末にも、十分納得で、大満足の1冊。


死ぬつもりで来たはずの最果ての地で、紫紋に心の支えが

そしてまた、わけありの男「丸弧」がまぐだら屋にやってくる

紫紋はチャンスを生かせるのかー?

唯一の償いを全うするために、生きる