ホントに超常現象か!? オカルト専門放送局のユーモアミステリー

小説・エッセイ

公開日:2014/3/7

チャンネルファンタズモ

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:加藤実秋 価格:626円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 キー局の報道部で活躍していた深見百太郎は、ある事件をきっかけに局を辞めるはめになる。再就職しようにも大手放送局はどこも雇ってくれない。そんな百太郎が流れ着いたのは、零細CS放送、しかもオカルト専門チャンネル「チャンネル・ファンタズモ」だった。彼が担当することになったのは「突撃! 隣の超常現象」というコーナー。元ヤンキーでオカルトマニアの構成作家ミサとコンビを組み、しぶしぶ「超常現象」の現場に赴くことに──。

 4本の短編が収録されているが、オカルトだ超常現象だとミサが騒ぐ事件を、百太郎がうんざりしながら物理的に(あるいは人間の仕業だと)解いていくパターン……というだけならよくある設定だが、本書はそこから一捻り。さらに、百太郎がテレビ局を追われる原因となった事件が再び動き出し、彼はプライドをかけて再度その事件に挑む──というもう一本の軸もある。

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 それにしても、いやあ、楽しい楽しい。各編の謎解きも、百太郎の失地回復もそれぞれ読ませるのだけれど、本書の最大の魅力はコネタではないだろうか(それを最大の魅力と言ってしまっていいのかわからないが)。そもそも主人公の名前が百太郎である。実はヒャクタロウではなくモモタロウなのだが、いやあ、だってオカルト専門チャンネルだもの、これはヒャクタロウって読むでしょ普通!

 そしてこのチャンネルが放送している番組が、前述の「突撃! 隣の超常現象」以外にも「祟っていいとも!」「オカルトQ」「心霊写真なんでも鑑定団」などなど。「ヤバネットはかば」で売ってるお茶は「じごく巡り茶」とまあ、隅から隅まで遊んでいる。それに対して百太郎がいちいち本家を出して「パクリですよね!」と突っ込むのもギャグの域に達している。社員のTシャツには変な文言が書かれているし、ミサは何でもオカルトに結びつけるしで、ドタバタコメディの魅力がたっぷりなのだ。

 また、オカルト用語はもちろん、ミサが元ヤンキーということで、そっち方面の用語も頻出。そしてそれらの用語が巻末にまとめられ、註釈がついている。これ、電子書籍の強みなんだが、本文で*がついている部分をタップすれば、その註釈の該当箇所に飛べるのだ。いやあ、便利便利。懐かしのテレビ番組や映画の話題も多いので、アラフィフ世代は特に楽しめるぞ!


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