「ゼニがない」が噺家を育てる。自分のビンボーをゆたかさに変えるコツ

更新日:2018/5/15

なめくじ艦隊 ――志ん生半生記

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 筑摩書房
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:電子文庫パブリ
著者名:古今亭志ん生 価格:648円

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日本でもアメリカでも貧困層が増えている。 ニューヨークではホームレスファミリーが増えており、つい先日、赤ん坊を抱いた女性が、ホームレスの札を前に置いて駅構内に座っているのを見たばかり。 明日は我が身かもしれず、身につまされるが、この本を読んでちょっと考えが変わった。 名人といわれる噺家のひとり、古今亭志ん生は、この半生記の中で「大豆を1合で親子5人1日すごした日がざらなんですよ」と言っている。 自分の方がこれより貧乏だと言える人は、今の日本にはまずいないだろう。

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湿気の多い場所にある長屋は、体長10センチもあるなめくじがはい回り、蚊の大群が押し寄せてくるようなとんでもないところ。 そんな長屋に住む人たちの暮らしぶりはみんな似たり寄ったり。 自分も苦労してきたから人の苦労も理解できる。 味噌醤油の貸し借りもあれば、豊かな人情もある。 今の時代、足りないのはお金ではなく、お互いに励まし合ったり助け合ったりする仲間ではないだろうか。 それがあれば、昔の噺家や長屋の人たちのように自分たちの貧乏を笑い飛ばしながら、案外楽しく生きて行けそうな気がする。

明治から戦前にかけての東京下町の暮らしぶりが生き生きと描かれているのも、この本の魅力