戦前の吉原には「江戸」の情緒や粋が薫っていた! 引手茶屋の女将が語った貴重な昭和の風俗史

2011/9/4

吉原はこんな所でございました

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : インタープレイ
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:eBookJapan
著者名:福田利子 価格:648円

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戦前までの吉原には、華やかな江戸の伝統や情緒がこんなにも色濃く残っていたのかと驚いた!
  
3歳のときに引手茶屋「松葉屋」の養女となった、大正生まれの女将が語る吉原の移り変わりの記録だ。風俗・歴史の証言であり、外からはなかなか窺い知れない内部の様子が密に描かれていて、とても貴重な一冊だと思う。

引手茶屋というのは、遊女のいる大見世に向かうお客を迎え、芸者や太鼓持ち(幇間)を読んで楽しませるところ。読んでいると、歌舞伎の「助六」や「籠釣瓶」の世界が脳裏に広がる。花魁(遊女)はもちろん、幇間や吉原の芸者衆についても、粋な伝統や芸力が詳しく語られていて楽しい。
  
また、たとえば「初会」「裏を返す」「馴染み」といった、伝統の仕来りもわかる。そう、お客は初会と二回目は花魁と顔を合わせるだけで、三回通ってやっと寝所に入ることができたのだ。
  
戦後の取り組みもおもしろい。 福田さんは吉原の灯が消えた直後から、作家の久保田万太郎等の支援を受けて花魁道中を復活。遊廓・吉原の文化を後世に伝えるために「花魁ショー」を開始した。かつて東京観光のはとバスの定番となっていたから、知っている人も多いのでは?
  
福田さんは愛情に満ちた眼差しで吉原の隅々にまで見つめ、調べ、思い出して、光を当てている。そこに単なる歴史本や自伝ではない深みがある。それに平易な語り口で書かれていて、何より読みやすい!

松葉屋のたたずまいを伝える写真もあり、当時の引手茶屋のしっとりとした趣きが感じられる

江戸時代の地図。吉原夕刻の周りは「お歯ぐろ溝」がめぐらされ、遊女の逃亡を防いだそう。このお堀で吉原は他と隔絶した地域になっていたのだ

昭和初期、春の吉原仲之町。引手茶屋の軒先の花暖簾と植木柵が華やかだ

上野の山でお花見をする昭和10年頃の芸者衆と幇間。なんとも艶っぽい!

幇間、つまり男芸者衆。「太鼓持ちはバカのメッキをした利口者でないとなれない職人」だったという

平成元年に行われた花魁道中。江戸の花魁は吉原の遊郭で最も格の高い遊女で、引手茶屋を通して「呼び出し」をしなければならなかった。花魁が遊女屋と揚屋・引手茶屋の間を行き来することを花魁道中と呼んだ (C)福田利子