探偵の視点で描き出す、浅草界隈の人間模様とは

小説・エッセイ

2014/3/17

リバースエッジ 大川端探偵社 1

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 日本文芸社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:ひじかた憂峰 価格:432円

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 人生の機微をつまみにすれば、酒がうまい。じんわりと味が染みたおでんよりも何日も漬けたぬか漬けよりも人の生きざまはきっとずっと濃厚で深い味わいがある。なんだかひとりでちびちびと杯を傾けながら読みたい本に出会ってしまった。

 ひじかた憂峰氏原作、たなか亜希夫氏作画の『リバースエッジ 大川端探偵社』は人間の深い味わいを描き出した作品だ。1巻あたり読み切り9編のストーリーが収められており、1編1編がジワジワと多様な味わいで胸に染み渡っていく。2014年4月にはオダギリジョー主演でTVドラマ化も決定しており、今一番注目の作品ともいえるだろう。

 舞台は東京浅草の隅田川沿いにある小さな探偵社「大川端探偵社」。調査員の村木タケシは、所長・大川と受付嬢・メグミとともに、毎日やってくる不可思議な依頼を彼らなりの方法で解決していく。

 「探偵もの」といえば、事件解決に至るまでの道筋を楽しむものだろう。だが、類まれなる情報網と推理力を兼ね備えたメンバーが揃った「大川端探偵社」はあまりにもあっけなく依頼を解決してしまう。このストーリーの一番の見所は依頼人の人柄や彼らの背後にあるものなのだ。

 探偵社に来る依頼はどれも変わっている。「どこかで開催されているという怖い顔グランプリに出場したい」「忘れられないプロボクサーに会いたい」「社内にある“座敷牢”にいる男を調査してほしい」…。どの依頼も不思議なものばかりだが、その裏には依頼主の過去がある。なぜそんな些細なことで悩んでいるのかと思って読み進めていても、村木をはじめとする「大川端探偵社」がそれを解き明かせば、読者は思わず息を飲むことだろう。

 大切に抱えている思いはその人の悩みの種となり、彼らの心を圧迫し続ける。だが、それは同時に彼らの矜持を写す鏡でもあるのだ。人は誰しも、譲れないものがある。だからこそ、悩み苦しむ。探偵社を訪れる人々を見ていると、改めて「こんなにも色んな人生があるものか」とその深みに驚かされる。大切にしているはずのものに振り回される依頼主の姿は時に自分を見ているようで共感させられることもあり、特に愛らしく目に写る。

 アナタは今何に悩んでいるだろうか。何を大切にしているだろうか。鋭い視線で活写された人間模様に目が離せなくなってしまうこと間違いない1冊だ。


探偵社に来る依頼は変わったものばかり(1巻)

決して大きな事件ではないが、依頼主やその周りにとっては一大事といえるものだ(1巻)

事件解決後の村木と大川の会話が味わい深い(2巻)

短編毎の最後の1ページが格別(2巻)

名言も多数。胸に染み渡る言葉の多い作品だ(2巻)
(C)ひじかた憂峰/日本文芸社