小さくたってソクラテス! 空さんは今日も楽しく「てちゅがく」に励む

2014/3/15

すみっこの空さん 1

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : マッグガーデン
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:たなかのか 価格:420円

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 錆びて朽ちたバス停、広い空、中央に金髪幼女。表紙を見たときビビッときました。これはきっとほのぼのふんわり田舎の人情マンガに違いない、愛と勇気と正義と勝利を求める話もいいけれどたまにはひたすらのんびり癒される本も読みたい、と自分の直感に従ったのが出会いでした『すみっこの空さん』。…金髪幼女にフラフラひかれたわけではないのです、決して。ええ、決して。さて、頼りにならない私の第六感も珍しく当たったようで、本作には『ARIA』のような雰囲気が漂っています。無邪気な小学生と人間とはまったく違う亀の価値観で、大真面目に紡がれる哲学(てちゅがく)をどうぞお楽しみください。

 話の始まりはある青年の引っ越し。青年は幼い頃からの夢を叶え絵本作家となるも、それで食って行けず、故郷に戻ってきたのです。青年のペット、ギリシャリクガメのプラトンにとっては、周り中に食べ物があふれる天国のような世界。けれど青年にとっては夢やぶれてたどりついた敗走の地でもあります。青年の暗い顔を心配するプラトンの傍らにふと現れたのは1人の少女。見慣れぬ金髪碧眼の少女、空さんは、驚く青年に向かってひとこと「こんにちは 神さま!」初対面での謎の発言に固まる青年ですが、実は空さんが青年を神様だと呼んだことにはちょっとした理由があって…というのが、1話の内容。

 てちゅがくマンガというだけあって、空さんとプラトンの視点から見た世界観がこれまた面白い。たとえば、四角四面のスペースに自分を収めて整然と並び授業を受ける学生の姿を、プラトンは「ペットショップで育った自分のようだ」と評した場面がありました。プラトンにとっては率直な感想でしかないのですが、それを読んだ瞬間ぞくりとして、私はなんとなく納得してしまいました。ほのぼのとした絵柄と空気に時おり混ざるプラトンの鋭い風刺は、まさに作品の隠し味。ただのほのぼのだけでは終わらない、りっぱなてちゅがく作品となっています。一度読み終えたあと、空さんとプラトンの会話をまた読み返して、自分自身でも哲学したくなるような本でした。


「こんにちは 神さま」亀のプラトンと空さんと神さまの、「てちゅがく」な日常はこうして始まった…

プラトンが水槽に感じていた閉塞感は、人間が世界に感じる閉塞感に似ています

「何という立派な甲羅でしょう!」プラトンはソクラテス先生(空さん)を立派な亀だと思っているようです

「机に並ぶ学生=ペットショップのケースの中の人」という発想は突き刺さってきました