物理や研究はしないただの推理オタクだけど…こんな“リケジョ”もアリ?

更新日:2014/3/26

名探偵マーニー 1

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 秋田書店
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:木々津克久 価格:432円

※最新の価格はストアでご確認ください。

 数学に物理に化学といった理系分野で意気軒昂と活躍する女子、う~ん、カッコイイです。ちなみに、判断推理や数的推理もれっきとした理系分野でして。「…ならば…である」を繰り返して解を求めていく、頭がグルグルするアレな学問ですね。公務員試験などでも出題される判断・数的推理問題。得意になるには、推理小説をたくさん読めば効果がある、ともいわれておりますが。

 さて、そんな推理モノ。コミックでも、それはもう、たくさん世に出されています。本作はそのひとつではありますが、これが大分新しい。いや、絵や事件自体には派手さがあるとはいえず、言ってしまうとひと昔前の雰囲気があります。推理的な仕掛けも、それほどひねられたものであるとは言いがたい。

advertisement

 なにが新しいか。王道作品では、主人公がさまざまな思考を重ね、壁にぶち当たりながら、解につながる糸をじょじょにたぐり寄せていきます。本作では、これがじつにあっさり。ある程度手がかりをつかんだら、オキマリの「思考世界(シンキングワールド)」に旅立って(時を忘れてあれこれ考える)、そこから端的に解答編。

 しかしながら、このくだりが一休さんの「ポクポクポク、チーン」のようなわかりやすさとシンプルさで、いっそすがすがしい。というのも、本作でもっとも焦点が当てられているのは、人間ドラマ。従来では比重が大きかった仕掛けや推理分のボリュームが、事件にかかわるさまざまな人間の事情、喜怒哀楽、表情などに当てられているわけで、重厚な読みごたえがあります。これが、推理モノにあって非常に新鮮。

 また、推理をするのが、誰もが知るプロ名探偵でもミステリアスな天才イケメンでもなく、どこかふわっとした雰囲気でつかみどころがない、ボサボサ頭の女子高生・マーニー。まるで性を感じさせない中性的な彼女は、普段、天然でぼけっとしたただの推理オタクのようでありながら、依頼を受けるとしっかりと仕事をするあたり、物理や研究こそしないけれど理系脳で道を切り開くステキなリケジョ。男子でも女子でも惚れそうになることうけあい。

 殺人事件など刺激的な材料がなくても、ここまで読者を引き込む推理ドラマが作れるのか、と舌を巻く本作。1話完結型で読みやすいのもあり、推理モノが得意ではない人含め、幅広い層におすすめします。


ブラシが通らない髪。ボサボサ頭の女子高生・マーニー

ブラシが通らない髪。ボサボサ頭の女子高生・マーニー

十人十色の人間ドラマが心に残る
(C)木々津克久/秋田書店