画集のような、詩集のような、文学の香り漂うコミック
更新日:2012/4/3
こんなにどきどきするのはなにゆえか!――今日マチ子さんの処女作『センネン画報』が発売されたとき、小説家の森見登美彦さんが帯に贈ったコメントです。
その、美しく切なく、淡いけれど深く胸に刻み込まれる同作。iPhoneを手にしてまっさきに購入したのがこの作品でした。というのも、こちらのiPhone版は、描き下ろしにくわえて、書籍にはない今日さんの解説がついているときいていたからです。
この作品集をひとことで言い表せば、「1ページ漫画」ですが、「漫画」と言い切ってしまっていいのか個人的には悩むところです。 なぜならそこに、はっきりとした会話やストーリーはありません。
水色を基調とした淡い色彩、そのなかにところどころちりばめられた鮮やかなアクセント。 風と水の音が聴こえ、その合間を縫うように男の子と女の子がふれあい、動く。 その切り取られた瞬間が、物語を紡ぎ、わたしたちの想像を喚起させるのです。 つかわれるモチーフも、日常のそんなものを!と解釈におどろかされます。
おそらく、ひとによって「すき」とおもう漫画は異なるでしょう。 そしてそのときの心情によって、また、心に響く1枚が変わるはずです。 寝るまえ。おちこんでいるとき。さみしいとき。恋をしているとき。 そんなふとした隙間の時間に、めくってみたくなる作品です。 iPhoneで持ち歩くには、もってこいだとおもいます。
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吹き出しボタンを選択すると、iPhoneでしか読めない今日さんの詩のようなことばが浮かびます (C)2010 太田出版