クズたちが集合した短編集、人間の人間らしい物語

小説・エッセイ

2014/3/28

甘い復讐

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:樋口毅宏 価格:1,620円

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 表題作の「甘い復讐」「永遠とドラゴン」「さくらの結婚」「ある芸者の証言」「十階建てのラブストーリー」「余生」の6編を収めた樋口毅宏さんの短編集。デビュー前の作品から書き下ろしまでが含まれている。この6編に共通すること。それは出てくる人がことごとくクズ人間とういうこと。しかし、このクズたちがおもしろい。

 クズといえども描かれるのは人間の本質。誰しも人は心の中に歪んだ感情を持っている。それを隠しながら生きている人、気付かないふりをしている人、自分でもわかっていない人、さまざまいると思うが、何ひとつ負の感情を持たない純粋無垢な人間はこの世にはいないだろう。『甘い復讐』に出てくる人々はクズだけれども、人間臭い人ばかり。泥臭くて感情的。表向きはクールを装っているけれどやっていることは最低。不遇な環境に生きる人たちの憎悪に満ち溢れている。ゲスくて、エグい作品ばかりだけれども、どれも、人間らしい人間が登場するので個人的には共感できる。

 この作品を書いた樋口毅宏さんもすごい。こんなに、全てをさらけ出して小説を書ける人はいないのではないかと思うほど攻めている。内容であったり、主張であったりがとことんパワーを感じさせ、非難されても炎上してもそんなの気にしないというスタンスが小説をクールに仕上げている。

 書き下ろしの「余生」では、そんな樋口さんの頭の中を少しだけ覗くことができる。樋口毅宏自身が主人公となり、自分が病気ではないかとひたすらに疑い続ける。過去を振り返り、ありもしない妄想と戦う姿が病的でおもしろい。

 この本を読んで見れば樋口毅宏はとにかくすごいと思えるはず。まだ、一度も樋口作品を読んだことのない人は、是非、この小説で樋口ワールドを試してみては。樋口毅宏入門書としてオススメの1冊。


「甘い復讐」は元ホストの修とセレブ妻の早苗の話。2人には意外な関係が!?

「さくらの結婚」では、樋口自身を思わせる新進気鋭作家Hが登場。こういう小ネタもおもしろい!