確かに存在する「惑星9」で描かれる8編の透明なショートドラマ

更新日:2014/3/28

惑星9の休日

ハード : PC/Android 発売元 : 祥伝社
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:町田洋 価格:525円

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 毎年、天体ショーが多くのファンの胸を熱くさせます。2014年も、10月8日の皆既月食、8月13日が極大といわれるペルセウス座流星群ほかいくつかの流星ショーなどがあります。夜空を眺め、ありもしない星とそこで生きる人々を想像してみたり、ストーリーを考えてみたりしたことがあるのは、私だけではないと思います。

 さて、本作はタイトルこそSFを強く意識させる『惑星9の休日』ですが、惑星をまたく壮大なドラマがあったり、いかにもなSF的世界観を楽しんだり、といった作品ではありません。どこかにあるかもしれない「惑星9」の、いたって平凡な日常をいくつか切り取った、という体です。それこそ、作中に出てくる「惑星9」というネーミングには、たいした意味がないのかもしれません。ご存知、太陽系惑星から外れた冥王星の替わりに、読者が「第9惑星」を作り出し、当てはめて読んでみてもよいでしょう。

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 ところで、「どこかにあるかもしれない惑星9」と前述しました。しかし、本作を読み終える頃には、「惑星9はある」と確信しているはずです。それは、必ずしも本作に出てくる「惑星9」そのものが宇宙のどこかに存在する、という意味ではありません。これらしい星がどこかにあって、作中に出てくるような“どこかで見たような人物たち”がそこで生活し、作中のようなストーリーが日常の中で生み出されている…そういった意味です。収録された8編のショートドラマは、いずれも空気のように透明で、読者のココロを静かに共鳴させ、実際にあったことのように記憶させる不思議な力があります。

収録されているのは、以下のタイトル
・惑星9の休日
・UTOPIA
・玉虫色の男
・衛星の夜
・それはどこかへ行った
・とある散歩者の夢想
・午後二時、横断歩道の上で
・灯

 「謎の新人」「話題の新人」などと注目を集めている町田洋のデビュー作。第1話は、次のページでまるごと公開中。スマートフォンでも。
【惑星9の休日】


8編の舞台は「惑星9」。さっそくSFらしい「永久影」が登場するが…

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