香取慎吾も番組で体験! 新幹線清掃のスゴすぎる早ワザの裏の感動秘話に涙

公開日:2014/3/30

新幹線 お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか? (あさ出版電子書籍)

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 株式会社あさ出版
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:Kindleストア
著者名:遠藤功 価格:※ストアでご確認ください

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 先日なにげなくTVをつけたら、バラエティ番組『おじゃマップ』(フジテレビ系)で、SMAPの香取慎吾やアンタッチャブル山崎が、新幹線清掃に悪戦苦闘していました。

 彼らが1日体験したのは、鉄道整備株式会社、通称“テッセイ”の新幹線清掃業務。ダイヤの乱れを招かぬため、1チーム22名編成、わずか7分間で新幹線をピカピカに磨きあげるという、スゴ腕の清掃会社です。その驚異的なスピードは、フランスの国営鉄道が見学に訪れ、アメリカのCNNが特集を組んだほどのハイレベル。

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 番組で紹介された作業工程は、ごみ回収に1分30秒、座席の回転に30秒、拭き掃除と掃き掃除で4分、1分で最終チェックを完了させるという、実に緻密で過酷なもの。『おじゃマップ』メンバーもテッセイの方たちに叱咤激励されながら、最後にはなんとか目標をクリアし、その表情まで清々しく変化していたのが印象的でした。

 そんなテッセイの“世界一の現場力”に迫る本がこちら。発売後、たちまち10万部を突破したという話題作です。テッセイには「エンジェル・リポート」と呼ばれる仕組みがあります。エンジェルとは、現場でコツコツと頑張っている天使のような人のこと。その人の素晴らしい取り組みをリーダーが見つけてリポートし、職場の壁に張り出したり、PCで配信するというシステムです。本書におさめられた、清掃現場で起きている知られざる“ちょっと素敵なエンジェル・ストーリー”には、仕事とは何か、働くとは何かを考えさせられ、“おもてなし”の心をたずさえ誰も見ていないところで汚れと懸命に格闘する人々の姿に、心打たれます。

 あの東日本大震災の当日、自家発電の電源がなかった車両はトイレの水が流れず、その汚れっぷりはまさに“惨状”だったそうです。リーダーすら一瞬ひるみそうになる目もあけていられない悪臭の中、トイレ担当の2人はイヤな顔ひとつせずに黙々と手で作業を進め、トイレをひとつひとつ、隅々まできれいに仕上げて、「がんばるぞ、日本」と言葉を交わしあったエピソードには、思わずこみ上げてくるものがありました。

 なぜ、新幹線の車両清掃会社が、これほど人々の胸を打つのでしょうか。それは、スタッフひとりひとりが“自分が主役である”という自負をもって仕事を受けもち、会社の理念である「さわやか・あんしん・あったか」を創造するため、日々たゆまぬ努力を続けているから。

 実は、当初はスタッフのモチベーションも低く、テッセイの従業員定着率はとても低いものでした。それが“お掃除の天使たち”の集まりとなり、“新幹線劇場”へと変化した背景には、現専務取締役の矢部輝夫さんによる、数々の取り組みがあったのです。

 詳しくは本書にゆずりますが、矢部さんの企業理念や人事制度には、組織の活性化やチーム改革、社員をモチベーションアップへ導く、「エンジェル・リポート」を始めとする産業・組織心理学にも通じるアイディアや工夫に満ちていたのです。その結果、「どうせやるなら、本気でやろうよ!」と、清掃前と清掃後に、ホーム際にピシッと一列に並ぶ整列や深々と頭を下げるお辞儀、お客さまへの一礼とともに「お疲れさまでした」「お待たせしました」の声がけが、スタッフの間で徹底されていったのです。

 やらされ仕事から、主体的なスタンスへ。目の前にある汚れやごみと向き合い、ただ、一心に清掃に取り組む。仕事の目的を理解して受容し、それをきちんと遂行することで自尊感情が高まり、自分たちの仕事に誇りをもち、互いに承認しあうことで、組織によい循環が生まれてゆく。読み進めるうちに、清掃業務を行う普通の会社でも、やり方次第ではこんなにも輝くことができるのだということが伝わってきます。そして「プライドを捨てて清掃会社に入社した」60代の女性が、「入社して新しいプライドを得た」という告白から、働く人にとって、ささやかな誇りと、やりがいは、とても大切なことだということに、改めて気づかされます。

 今の自分の日常を「つまらないな」とか、「どうせ社会に出てもろくなことはなさそう…」と、冷めた諦めモードで過ごしてしまっている人はぜひ、熱いテッセイマインドに触れ、ときには美談にひたってみることをおすすめします。日本もまだまだ、捨てたものではありません。


世代もバラバラな、“お掃除のエンジェル”たち。1日に清掃を行う車両本数は、約110本! 車両数は約1300両にも上るのだとか

礼に始まり、礼に終わる。ホームで見かけるテッセイの“プロの仕事ぶり”“礼儀正しさ”にハッとした経験はありませんか

実はとても汚れていることが多い新幹線のトイレ。出張帰りについ飲み過ぎて…という方もいらっしゃるので、遅番の人は本当に大変

ホームで心細そうにしている、目の不自由なお客さまをみかけたら、清掃の合間にご案内することも

後から入ってくる人たちのめんどうをみる主任は、いわばお母さん。若い人の成長を優しく見守る、そんな職場っていいですね