かくして猿たちは騙される…
公開日:2014/4/2
利権の復活 ― 「国民のため」という詐術
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : PHP研究所 |
ジャンル:教養・人文・歴史 | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:古賀茂明 | 価格:616円 |
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「朝三暮四」という言葉がある。中国に猿好きの男がいて、たくさんの猿を飼っていた。家計が傾いてきたとき、猿たちに朝4つ、晩に3つの栃の実をやろうといったところ、猿たちは怒ったが、では朝3つ晩4つではどうだと言うと、納得したという話。言葉は変わるが結果が変わらないこと、転じて言葉巧みに人を騙すことをさす。
さて、東電の再建時「東京電力に任せるのではなく、国として対応する」という名目で税金の投入が決定し、東電の企業としての体も、銀行の資金も守られた。しかし、本当に国民の利益を考えるのなら、経営破綻していた東電は解体し、銀行に資金を出させ、国民の税金の投入は控えるべきだった。結果として、安倍政権は、ゾンビ企業に税金と電気料金をジャブジャブつぎこんで、死んでいるものを無理矢理生きているように見せかけることにしたのだ。まさに朝三暮四的な詐術で税金が投入され、さらに電気料金値上げ。国民はまったく虚仮にされているわけだが、猿並に騙されやすいか、もしくは故意に騙されたマスコミもその一助となったわけだ。
経産省出身の著者は、このときのレトリックの分析をプロローグとして、この国で政治家と官僚が行おうとしているたくらみを暴きだす。官僚が政治家を丸めこむためにつくり出してきた論法が、いま政治家が国民を騙すことに使われ、ここ10年ほどで行われてきた改革が、すべて台なしにされようとしている。
原発問題ばかりではない。「憲法改正」については、9条だけを変えると国民の反発を受けやすいので、ほかの条文も変えると言い、「古くなってきたから」「占領軍におしつけられたものだから」というレトリックを使う。あまつさえ、国民の大多数が変更に賛成という発言まで飛び出すのだが、1票の格差すら是正されていない国会で、どの口が“国民の大多数”と言うのか。
ほか「TPP」「アベノミクス」「外交問題」に関しても、安倍政権がどのような話術で問題の核心から人々の目を逸らしてきたか、筆者は論破していく。
安倍政権の論法は、断定的で口当たりはよいかもしれない。しかし、本当に彼らがいっているのがどういうことか、確認する必要がある。騙されっぱなし、すべて他人のせい、というのは一見楽な生き方に見えるかもしれないが、結局ツケを払わされるのは税金を払い、戦争に行かされる私たちなのだから。
レトリックのからくりについても解説があるのでわかりやすい。リテラシーとして自分のものにしておきたい分析だ
勇ましい発言をしながら、既得権益団体ばかりを守ろうとするのが「美しい国」の首相? 日本のニュースでは報道されていないが「挨拶だけ英語」の安倍氏の外交下手についての言及は海外の媒体ではしばしば見かけられる
外弁慶の一例。ロシアのガスと電力を輸入すれば日本国民にとって利益となり、外交にもプラスなのに、電力会社の利権を守るために、千載一遇の提案を見送り、北方領土は帰ってこないこととなった