異国情緒満点! アジアの鼓動が伝わってくる、“芳醇”でほのかにスパイシーな連作短編集

小説・エッセイ

更新日:2012/1/20

エキゾティカ

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 双葉社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:中島らも 価格:432円

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サワディーカー!  初のタイ旅行から帰ってきました奈良です。
なぜか本国では大好きなパクチーにあまりお目にかかれなかったので、心残りをはらすためにさっそく近所のスーパーで入手したパクチー(福島県産)を齧ってはパクチーくさい溜息をつき、(時折恍惚とした表情を浮かべるなどして)パクチーくさい手でこの原稿を書いたりしている今日この頃です。

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さてさて、旅のお供に本を持って行かれる方はけっこういらっしゃると思うのですが、これがけっこうかさばるんですよね。そこで今回の旅行では、ここぞとばかりに電子書籍にしてみたのですが、これが実に便利でして…。
基本的に私はiPhoneを肌身離さず持ち歩いているので、空港でもビーチでも好きな時にさっと取り出して読むことができて、かなり重宝しました(それに、Wi-Fiがつながればどこにいても購入できちゃいますしね)。
で、今回購入したうちのひとつが、この中島らもさんの『エキゾティカ』。「どうせなら旅情を盛り上げてくれそうな本がいいな」と思って選んだのですが、これが見事に大ハマリ。
中国、ベトナム、バリ、そしてタイなどアジア諸国を舞台にした、まさにエキゾティックでエスニックな短編小説集で、一編の長さもバラバラなら、現地で暮らすひとの話もあれば日本人旅行者の話もあり、寓話や幻想的なものもあれば、妙にリアルな話(ミュージシャンでインド通の青年「大槻君」が登場したり!)もあったりと構成も内容もまちまちなのですが(笑)、らもさん独自の豊かで“芳醇”な文章表現に加え、そのカオスっぷりも功を奏してまさにアジアのどこかの街の路地裏に、あるいはさらにそこから異次元空間に迷い込んでしまったかのような気分にさせてくれるのです。
特に好きだったのは、上海が舞台の『合同楽奏』。1950年代終盤、上海一の楽団(といっても上海にジャズバンドは一つしかない)に、あるひとりの黒人客が共演を申し出る。その黒人客というのが実は…というお話。ジャズ好きならずとも興奮します。作家の主人公が、自分のマネージャーで“ガンジスの水を飲んだ女”と呼ばれているくみこと、彼女の思い出の地を訪れる『KUMIKO』は臨場感があってラストもとてもいい。
…そうそう、この『KUMIKO』をはじめ作中には、カレーにフォー、ナシ・ゴレンなどなどアジア諸国の実にさまざまな料理や食材もたくさん登場するので、その点でも大いに楽しめました。あ、もちろんパクチーも(コリアンダーという英名で)何度か出てきますよ(笑)。

目次の一部画面。vol.1~9まである。青字部分をクリックすれば即座にその話にとべるので、興味ある国名から順に読んだりすることも可能。ちなみに上海のみ「上海四重奏」と題し、4話収録されている

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