「チャタレイ夫人の恋人」裁判の被告が送る、恋愛、結婚、人生を考えるための手引き書

小説・エッセイ

更新日:2012/1/20

女性に関する十二章

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 中央公論新社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:伊藤整 価格:378円

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この本の著者、伊藤整は、1950年にわいせつ文書として裁判になった、D.H.ロレンス著「チャタレイ夫人の恋人」の翻訳者としても知られる。
「女性に関する十二章」は、その後、1950年代初めに「婦人公論」に連載されたエッセイで、戦後、憲法上男女平等になり、選挙権も持つようになって、戦前とは違う恋愛観、結婚観を持ち始めた女性たちに送るメッセージというような内容。

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戦後わずか6、7年という時代に、当時の一定の教養のある女性たちの意識がどのようなものだったかわかって興味深い。
伊藤整は頭でっかちの女性読者をややからかいつつ、男女平等も高い理想も大切ではあるけれども、男女の本質的な違いは厳然とあることも認めた方がいいというスタンスで話を進めていく。
そして、自分も相手も息苦しくならないような関係を築くには、どうしたらいいかと具体的に話を展開していくのだが、後半は次第に、生物としての人間が幸福に社会の中で結婚生活を送るにはどうしたらいいか、という、本質的なテーマに移っていく。
「生物としては調和的な結婚という生活様式は、その中に論理、情緒、芸術、道徳、法律などという、もとの生物にはなくて、人間のみに特有な、いわゆる文化的な嗜好をあまり多く持ち込むとこわれてしまうのです」(伊藤整)。
この本を読んでも安易な恋愛テクニックは学べない。だが、今の時代を少し楽に生きられる知恵を与えてくれる。人間関係、仕事、道徳や常識などに取り囲まれて息苦しい思いをしている人には、ぜひ読んで欲しい。
ただ、難を言えば、前半部分は伊藤整本人が言うところの“ユーモア”満載でうっとうしい。声を大にして言いたいが、少なくとも私の経験では、自分で「ユーモアのセンスがある」と公言してはばからない人に、ユーモアのセンスがあったためしがない。伊藤整も例外ではなかった。実に惜しい!

恋愛や結婚を考える上でも役立つが、人間としてどう生きるか、根本的な悩みを抱えている人にも読んで欲しい内容の十二章

拡大鏡という機能付き。で、使ってみました