神経伝達物質ドーパミンが支配する人間の快楽の秘密を詳解

公開日:2014/4/21

脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:BookLive!
著者名:中野信子 価格:780円

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 私は難治性鬱のためもう30年から病院に通っている。鬱というのは気分が極端に沈む病気と理解されているが、実は身体症状も伴うのであり、少なくとも私の場合は体の変調も激しく出現する。ともかくだるい。座っていても寝転がっていても、腹のあたりから全身に鈍い痛みのようなだるさが染み渡ってくる。しょうがないから床に倒れて我慢している。2日も我慢しているとどうやらやり過ごせるようになるのである。

 鬱に併発するパニック障害にもご丁寧においでいただいていて、少し混んだ電車には乗れない。劇場でも両側を人にはさまれた席などは怖くてとても座っていられないとくる。ひとさまに何かされるという怖さではないところがやっかいだ。対象はなくひたすら怖さだけがキリキリと全身を突き上げる。

 神経を安静にするセロトニンという脳内物質が激烈に減少するのがこの病気の原因だといわれている。。

 そんな憎いアンチクショウであるドーパミンを解説したのがこの本だ。

 ドーパミンは決して悪役ではなく、爽快感ややる気を生み出す人体に必要な物質である。本書に説明されているところによれば、たとえば苦労して何か一つのことを達成したときやそれをほめられたとき、脳内にドーパミンが発せられて喜びが生まれる。ところがたとえば競馬やパチンコ、もっと危ないところではもろもろの賭博にかかわり勝ったりすると、どっとドーパミンが出されて快感を得るのであるという。もちろんその快感が忘れられず、さらに深くのめり込むという悪循環が起きるのである。このサイクルを著者は報酬系と呼んでいる。ちなみに恋愛のドキドキ感もドーパミンの作用である。

 行動や人間関係だけがドーパミンの発生要因ではない。それ以外に何かといえばドラッグである。このあたりから本書はドーパミンの詳解から、薬物の種類や作用の解説になぜか入り込んでいくのですこぶる面白くなってくる。麻薬、覚醒剤、MDMA、幻覚剤、などなどがどのような植物や化学薬品から抽出されるのかちょっとした薬物辞典である。

 言うまでもなく脳内には、ドーパミンやセロトニンのほかにアドレナリン、ノルアドレナリン、メラトニン、などの神経伝達物質が存在しているのであって、それらへの叙述もちゃんとある。

 私たちが毎日の生活の中でおぼえる喜びや悲しみや執着やあきらめや、そうした心の揺れが、すべて脳みその中にじんわりとにじみ出る微細な物質のせいである、そんな即物的なメカニズムが人を動かしているのだと思えてくる本書はあなたを不快にするだろうか。不快になるとしたらあなたの脳にはセロトニンが足りないのである。