新たなヤンキー、「マイルドヤンキー」の消費スタイルをさぐる

公開日:2014/5/4

ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:BookLive!
著者名:原田曜平 価格:800円

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 『クローズZERO 3』『ホットロード』とヤンキー系映画が話題になったり、70年~80年代、かつての「ヤンキー文化」を再考する展示会が開催されたり、近頃静かだったヤンキー周辺が少しざわざわ。本書「ヤンキー経済」は、かつてのヤンキーに比べてやさしくなった新たなヤンキーを「マイルドヤンキー」と呼び、この「マイルドヤンキー」たちこそこれからの消費を支えるとして、彼らの消費スタイルをさぐり、そのニーズに合った新たなサービス、アイデアを提案する。

 これからの消費の主役という「マイルドヤンキー」を本書では次のように説明する。「上“京”志向がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤を構築し、地元から出たがらない若者たち」(序章から)。なぜ「マイルドヤンキー」と呼ぶ若者たちが登場したのか、その理由は本書にゆずる(第2章「マイルドヤンキーの成立」)として、この「マイルドヤンキー」を知るためのキーワードをあげれば、まず「地元」になる(「地元」とは県市単位の広いエリアではなく、生まれ育った地域のこと、5km四方の小中学校の学区程度をイメージ)。「マイルドヤンキー」は、かつてのヤンキーらしさを残した少数派の「残存ヤンキー」と、それが希薄な多数派の「地元族」にわかれるとされるが、「地元」は両者にも共通する。

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 では、「マイルドヤンキー」の消費スタイルとはどのようなものなのだろう。自宅から専門学校に通う多数派の「マイルドヤンキー」男子を例に、その姿をなぞると。ヘアスタイルは普通のショートカット。ファッションは近くの大型ショッピングモールで。リーゼントにそり、「ボンタン」「つなぎ」のそれ系ファッションや『ビー・バップ・ハイスクール』『ろくでなしBLUES』などのそれ系マンガへの関心は低く、かつてのヤンキーたちにあった任侠道、反抗精神は後退。休日は、中学時代からの仲間たちと地元のファミレスや居酒屋でダラダラと過ごす。飲み方は、飲むことが目的ではなく仲間たちと話すこと。スマホでのSNS利用も、人的ネットワークの拡大ではなく、仲間たちの動向を知るため。LINEの「タイムライン」は必見。移動は基本的に車。いまは必要なときに親のミニバンを借りているが、車を選ぶとすればナンパ系のスポーツタイプではなく、仲間たちみんなが乗れるバン。自分の将来について「ビッグマウス」することはなく、いまの延長線上に地元か地元近くで働き、結婚相手もできれば地元でと思う。

 「マイルドヤンキー」を知るキーワードには「地元」に加え、それと一体の「仲間」もあげたほうが適切だろう。彼らの消費スタイルの基本には、「地元主義」「仲間・家族主義」があるのだ。「生まれ育った土地に根ざした同年代の友人たちと、そこで育まれてきた絆意識、家族と地域を基盤とした毎日の平穏な生活。それこそが、彼らにとって最も価値あるものなのです」(序章から)。展望の見えにくい今日の状況にあって、本書の副題にあるように若者たちの「新保守層」化が進んでいるようだ。

 「地元」「仲間」へ強いこだわりをもつ「マイルドヤンキー」たち。「こだわりとは生き方だ」といった人がいる。本書は、「マイルドヤンキー」の消費スタイルをさぐるマーケティングの本にとどまらず、若者たちの生き方をさぐる若者論でもある(著者は広告代理店「ブランドデザイン若者研究所」リーダー)。


目次から

本書は多くの若者たちへの取材・調査により、内容には高い説得力がある

「マイルドヤンキー」を理解するキーワードのひとつは「地元」

今日の若者たちのなかでの「マイルドヤンキー」のポジショニング