うねる描線、陰影の妖しさ――。幻想マンガの巨匠・高橋葉介の作品をiPhoneで堪能しよう

更新日:2012/4/3

夢幻紳士 マンガ少年版

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 朝日新聞社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:高橋葉介 価格:324円

※最新の価格はストアでご確認ください。

高橋葉介初期の代表作『夢幻紳士 マンガ少年版』が電子書籍化されているのを知り、早速ダウンロードしてみました!

高橋氏といえば、装飾的な絵柄によって知られる怪奇幻想マンガの大家。その個性的な画風がiPhoneのモニターではどう映るのか、興味があったのです。

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結論からいえば、とても満足のいく買い物でした!

手のひらサイズのiPhoneのモニターでも、高橋氏ならではの変幻自在にうねるタッチの魅力はしっかりと伝わってきます。墨ベタを多用した妖しくゴージャスなページ構成も、紙の本よりむしろ鮮烈に感じられるようです。長年の高橋葉介ファンにとって、これは嬉しい発見でした。

本書には、怪奇探偵・夢幻魔実也が奇妙な事件を解決してゆく〈夢幻紳士〉のシリーズと、読み切り短編3作が収録されています。幻想・耽美系のマンガが好き方なら、どれもお気に召すこと請け合い! 江戸川乱歩、山田章博、丸尾末広、といった路線のファンなら、是非とも押えておきたい作品です。あまり怖くはないので、ホラーが苦手でも大丈夫。

個人的には、砂漠を旅する魔実也がカカシの群れに襲われる短編「案山子亭」がベストですが、「顔泥棒」にあるナンセンスの味も、「夢幻少女」「骨」に漂うリリカルさも捨てがたいですね。

ありきたりの日常を忘れて、めくるめく幻想の世界にダイブしたい。そんな時には一読をお薦めしたい作品です。怪奇幻想ファンにとって、高橋葉介作品はまさに宝の山。便利な電子書籍版を活用しつつ、どんどん読んでいただきたいなと思います。

巻頭の口絵もばっちりカラーで収録!

第一話「顔泥棒」の扉ページより。少年探偵・夢幻魔実也が帝都東京を駆けめぐる!

少年探偵・夢幻魔実也のもとに今日も奇怪な事件の依頼がもちこまれ…

戦前の夜の闇を、耽美的なタッチで描いています

毛筆によって描かれるという、うねる描線が高橋葉介マンガの特徴。iPhoneでもちゃんと味わうことができます。(C)高橋葉介/朝日新聞社