直木賞に新風を吹き込んだ、じんわりあったかハードボイルド風味都市小説

小説・エッセイ

2010/12/7

まほろ駅前多田便利軒

ハード : iPhone 発売元 : Bungeishunju Ltd.
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:450円

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多田便利軒。 ラーメン屋ではない。

子どもの送り迎えから、ペットの世話、窓の修理など、時給2000円でよろずお困りごとを引き受ける便利屋さん。まちがっても探偵ではない。「犯罪に加担しているやつを見かけたら、おまえどうする」「放っとく」これが基本スタンス…の、はずだった。

ひとり、故郷のまほろ市で便利屋を始めた多田啓介は、持ち前の生真面目さでそれなりに穏やかな日々を過ごしていたが、高校の同級生・行天(ぎょうてん)春彦との再会で思わぬ方向へ。多田は、事務所に居ついてしまった行天を相棒に、便利軒に持ち込まれるまほろ市の人々のささやかな願いをかなえるべく、今日も愛用の軽量トラックで街を走る。

全6話の連作短篇集で、縦軸に便利軒が関わる事件を、横軸に多田、行天という二人の男の謎を絡め、エピソードを積み重ねて「まほろ市」という架空の街を描いていく。

多田、行天がハードボイルドにカッコよい! ハードボイルドに定義はいろいろあるけれど、私は男の痩せ我慢的クールだと思うの。過去を秘めた彼らは、ヒーローになろうなんて思想はないが、目の前で助けを求める人のことは放っておけない。痛みを知る男だからこその優しさが顔を出して、そのギャップにやられちゃうんだなあ。

ちなみに「まほろ市」のモデルは著者在住の東京・町田市。真の主役は「まほろ市」ではと思うくらいリアリティをもって描かれ、都市小説としても楽しめる。とゆーか住みたくなる。チワワを抱えて駅前で立て看板を持つ行天をこっそり見物し、我が家のパソコンを多田に繋げてもらいたい(そして軽トラに乗せてもらう)。

本作は直木賞に輝いており、まだ紙版のみですが続篇『まほろ駅前番外地』と、山田ユギによるコミカライズ版が出ている。さらなる続篇「まほろ駅前狂騒曲」も週刊文春で連載中だ。

また、映画化も決定しており、瑛太×松田龍平の共演で2011年4月に公開予定(主題歌はくるり)だそう。

「旅? どこへだろう」「とてもとても遠い場所。自分の心のなかぐらい遠い」 仕事先におばあちゃんに来年の預言をされた多田。こんな深遠な台詞がさりがなく配置されるもの魅力

「こんなちっちゃい犬」中略「絞め殺してゴミの日に出してもばれないよ」 スーパークールな行天のセリフ。しかし、行天、こんなことを言ってますが…

最果ての楽園、まほろ市。この魅力に取りつかれたら、離れられないのだ