ファンタジー嫌いのひとにも読んでほしい、どこかの国で生きてる人の、物語

小説・エッセイ

更新日:2012/2/3

上橋菜穂子 獣の奏者

ハード : iPad 発売元 : Kodansha Ltd.
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:0円

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母と二人で暮らす、十歳の少女・エリン。 真王のための戦闘用の生き物・闘蛇を管理する村で育ち、けれどある日、村で育てていた闘蛇が全滅するという事件が起こり、獣ノ医師だった母は、すべての責めを受け処刑されてしまう――。

すべてを失ったエリンは、ある日、天翔ける美しい獣、王獣に出会う。決して人になれない獣と心を通わせるうち、エリンは知らないうちに、国の運命を左右する禁忌に踏み込んでいた…。

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かなり壮大なファンタジーであるため、あらすじを一言で説明するのはちょっとむずかしいこの物語。国の思惑と、人の想いが交錯し、物語それ自体が鼓動を感じる熱さをもっています。

すべての生き物が共通して持つ感情は「恐怖」だと、エリンの師はいいます。獣と完全に心を通じ合わせることは、できないのだと。

絶対的な他者――。 それは獣に限った話ではないと、わたしはおもうのです。

この物語のなかにも、さまざまな立場で、さまざまな思惑をもったひとたちが登場します。その人生と、感情は、そのひとだけのもの。それぞれが善とするものを、守り、つらぬく。

時にそれは制度であり、規律であり、社会でもある。ともすれば絶望ともなる、他者との関係。だけどそこに確かにある救いと希望の光を、王獣とエリンを通じて、上橋さんは描いている気がします。

ハマりこんでくると抜け出せないし、エリンの、そのまわりのひとの、王国の、激動の運命に心が揺さぶられるので、旅行のときにぜひお持ちください。 じっくり、何度でも、読みたくなる本の世界に、一瞬で旅立てます。

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