やるせないけど心に響く──。特異な切り口で愛の意味を問いかける、SF連作短編集

2010/12/9

殻都市の夢

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 太田出版
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:鬼頭莫宏 価格:500円

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ふと、読後に「あーおもしろかった!」だけで終わらず、印象に残る作品ってどんなかな? って考えてみたんですけど。

私のばあい、思想的なことだけでなく何かしら説教くさくないカタチで新たなモノの見方を教えてくれる…「あなたはそう信じこんでいるかもしれないけど、こういう捉え方もあるんじゃない?」と示唆してくれる作品に出会うと(それがたとえ受け止めがたいものであっても)、うれしいし心に残ってることが多い気がするんです。

こんなこと言ってると「じゃあ、自己啓発本だけ読んでればいいじゃん!」って言われちゃいそうですが、そういうことでもなくて、お話好きの私としてはあくまで物語をとおして導かれたいんですね。

たとえば、この『殻都市の夢』は、天にむかって新たな建造物をずんずん積み上げていくことで成立している未来都市を舞台にした連作短編集なんだけど、その中に「3年間の神」という作品が収録されていまして──

路上生活孤児で餓死する寸前だった“わたし”はひとりの男に拾われ一緒に暮らすようになるが、実は男は3年で死に至る性感染症を患っており…というお話。 骨と皮だけの少女の体を男が抱くくだりは痛々しいし、あまりにも身勝手な男の行動に憤慨せずにはいられないのだけれど、ところが少女はその男を“わたしの神様”だと語る。(本来の)“神様はわたしに何もしてくれなかった”。でもこの男は、私に3年間の命を与えてくれた、と…。

6話目に収録されている「造物主の檻」も非常に興味深い作品。

架空のマンションに仮想の住人たちを住まわせその生活ぶりを眺めるだけ、というゲームを開発し、そこから得た収入で実際にゲーム同様の構造体を造り、生身の少女を誘拐してはその中へ閉じ込めてその様子を眺めていた男の話。ラストが衝撃なのだけど、これは特に男性の読者に“効く”かも。

やるせなさの残る切ないお話ばかりではあるのだけれど、いずれも「愛」や「生」の在り方に対してさまざまな可能性を示唆し、今までとは異なる新たな視点を与えてくれたという点で、とても有意義な読書体験になりました。

ちなみにこのマンガ、けっこう少女の裸や性的なシーンが出てくるので、むかし部屋に置いていた同様の本(エロ本じゃないよ!)を当時好きだった男子に見られて何ともバツの悪い思いをした経験をもつ私としては、電子書籍になってくれてヨカッターと思いました(笑)。

おもに、この2人の管理官がかかわる事件の話で構成されている

収録数は、全7話

画面中央をタップすると、自由にページを移動できるスライダなどのツールが表示される

ツールの「?」マークをクリックすると、くわしい操作方法が見られる

iPhoneで読む場合には、横むきがオススメ。なお、この電子貸本Renta!では、購入した作品はiPhone、iPad、PCどの端末からもログインするだけで手軽に読むことができるので、とっても便利