空気のような存在の国民的マンガ『ドラえもん』を分析するとこうなる

更新日:2014/5/27

源静香は野比のび太と結婚するしかなかったのか ― 『ドラえもん』の現実

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : PHP研究所
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:中川右介 価格:720円

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 のび太がどんなダメンズだろうと、愛し合っていればいいんじゃない!? と突っ込みを入れつつ購入。タイトルに磁力があることは否めません。あんなにできて、可愛いしずかちゃんがどうしてのび太と結婚するのか。

 日本を代表するマンガ『ドラえもん』はこれまでにも色々な形で社会分析のネタにされてきたと思いますが、誰もが思うこの疑問をダイレクトにタイトルに持って来たのが勝利の1冊。果たしてこのテーマで1冊どんな展開になるのだろうかと、興味津々でページをめくること1時間弱…。

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 あんなに誰もが知っている『ドラえもん』なのに、分析しようとするとその難しいこと! あとがきで著者が「いまの日本においては存在するのが当たり前で、だれも気にしないもの」、つまり空気のようなマンガ作品について、空気の成分を分析するように、「分析というか解説というか屁理屈を述べてきた」というように、国民的マンガはどうしてそれが国民レベルの愛され方になったのかの原因すら分析不可能。無理を承知でなんとかそのナゾの糸口を探し出そうとしている著者の努力と観察方法は評価に値します。

 社会の縮図ともいえるのび太やジャイアンたちの人間関係が示唆するものはなんなのか、しずかちゃんの紅一点の意味は? そして一番面白かったのが、フェミニズム云々の前に「しずかちゃんの行動は冷静に考えればよくわからない」(第1章)。読後、『ドラえもん』がミステリアスに見えてきます。そしてある意味、『ドラえもん』は日本人の国民性である曖昧性の体現なのかも。なんとも「奇妙キテレツ摩訶不思議」なんですな。


しずかちゃんは酒場のママ的存在

そう言われればそんな気も。確かにお母さん群の描写は貧弱

ドラえもんは母性も父性も描かれ方が曖昧で