プロのアーティストも絶賛! 『BECK』の次に来るバンドコミックは…?

更新日:2016/1/8

ウッドストック 1巻

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 新潮社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:浅田有皆 価格:454円

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 「錆びるより燃え尽きたい」。ふと、ニルヴァーナのカートコバーンの言葉を思い出す。ロックとは何なのだろうか。低音が胸に響き、メロディーラインが全身を駆け抜ける。鳥肌が止まらず、何か叫び出したいような、リズムに身体を揺らさずには居られないような感動はなんだろうか。人が錆びないように、燃え尽きるように生きられるように、ロックミュージックはあるのだろうか。魂がこもった音楽は人の心に火をともす。そんな音楽を生み出し、奏でるバンドについてあまりにもリアルに描かれた作品がある。

 浅田有皆氏著『ウッドストック』は、本から音楽が聞こえてきそうな、フェスでライブを聞いているような迫力に溢れた青春バンドコミックだ。『BECK』や『NANA』など、バンドを題材とした漫画は数あれど、これ程までにリアルでマニアックな作品は他にあっただろうか。タイトルは、ロックをこよなく愛する主人公が憧れる伝説のロックフェス・「ウッドストック・フェスティバル」から名付けられたものなのだが、この作品の随所には、音楽で生計を立てようとした時期もあったという浅田氏の音楽マニアっぷりが伺える。紙版では神聖かまってちゃん、シシドカフカ、雅-MIYAVI-、陰陽座、横道坊主など、プロのアーティストが帯を書いていることも頷けるだろう。わかる人にはわかるコアなパンクバンドやミュージシャンの名前。バンド演奏のテクニックの描写。細部にいたるまでインディーズバンドの活躍をありありと描き出している。

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 主人公は、内気で冴えない運送業者の青年・成瀬楽。世間では正体不明の謎の音楽配信バンド「チャーリー」が話題をよんでいるが、そのバンドは引っ込み思案な性格からバンドを組むことができない楽の架空バンドだった。楽は「チャーリー」を立ち上げるとひとりで作詞・作曲・演奏・編曲まですべて行ない、まるでバンドメンバーで演奏しているかのように曲を発表していたのだ。そんなある日、ささいなきっかけから、楽は、よく荷物を運び入れるライブハウスの店長・新山椎奈に「チャーリー」であることに勘づかれてしまう。バンドに誘われたが楽は一体どうするのか。コアな音楽ファンだけでなく、一般の人々にも名が通り始めた架空バンド「チャーリー」はこれからどう活動していくのか。

 バンドはひとりひとりの個性の化学反応だ。ネット上での架空バンドではなく、本当にバンドをやろうというのならば、ギターの楽やドラムの椎奈だけでなく個性的なメンバーが必要となる。同じ運送業者で働くベーシストの町田要や、ふとしたきっかけで知り合った空手が得意な女子高生の前田鈴音にボーカルを頼むなど、楽は次第に積極的にバンドメンバーを探し始める。架空だったはずのバンドが最強の像を結び始める。

 それぞれが個性的であっても、音楽の目指す方向性が同じかどうかは、一度楽器を合わせてみれば分かる。歯車がピタリと噛み合うように出会うべくして出会えたメンバーとの演奏に、楽は震える。演奏には人の生き方が現れるのだ。時間もかけて腕を磨いてきた音がその人の魂を表現するのだ。彼らの個性はバラバラだが、根は似たものがある。音楽を心から愛し、上を目指そうとしている。

 ネット上で楽の書いた曲は瞬く間に人に知れ渡っていく。だが、それは良い反響ばかりではなく、「チャーリー」が謎のバンドであることを良いことにニセモノまで出現し、ライブを行なっているらしい。本物としてニセモノを倒すことができるのだろうか。一体誰がこんなことを仕組んだのだろうか。今、戦いが始まろうとしている。

 本をめくれば、新刊が出るたびに映像化を望む声で溢れていく理由も頷けるだろう。この青春バンドコミックは音楽を愛する全ての人にぜひともよんでほしい作品だ。


成瀬学はネット上で架空のバンドのHPを立ち上げていた。メンバーはたったひとり、学だけ。密かに音楽をアップしていた(1巻)

チャーリーの音楽に魅了されたというとの出会いが学を変えていく(1巻)

学は次々とメンバーを集めていく。ボーカルに選んだのは…柔道が得意な女子高生?(2巻)

音楽の描写が素晴らしい! 音が聞こえてきそうな迫力だ。(3巻)

世の中で話題になってきている謎のバンド「チャーリー」の知名度にあやかろうと偽バンドまで出現(3巻)

一体これから本物のチャーリーはどうなってしまうのか(3巻)