何よりも力強く人生を肯定する奇跡の4コママンガ

2010/12/22

自虐の詩 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 竹書房
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:業田良家 価格:500円

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人生の一時期、このマンガこそが私にとって救いでありました。もちろん今でもたまに読み返しますし、その度にラストシーンでは涙が止まりません。

本作は今は亡き「週刊宝石」に連載されていた4コママンガでした。いかにも幸が薄い女・幸江(なんという皮肉なネーミング!)と、定職を持たないろくでなしの男・イサオ。異常なまでに尽くす幸江に、イサオが逆ギレしてちゃぶだいをひっくり返すという、使い古された夫婦漫才のようなネタを中心に、2人の日常をコミカルに描いた他愛もないマンガであったのです。

ところが登場人物の過去が描かれはじめた途端に作品の様相は一変します。キャラクターに奥行きが出て、週刊誌の穴埋め的な4コママンガは、壮大な大河ドラマへと変貌しました。子どもの頃はいじめられっ子だった幸江。同級生で唯一無二の親友だった熊本さん。野球部の人気者・前田くんへの恋。父親の犯罪。熊本さんへの裏切りと別れ、そして和解…。

物語の終盤の回想シーン、中学校を卒業して東京へと旅立つ幸江を見送るべく、熊本さんは駅へと駆けつけます。息を切らせて、泣きながら手渡したのはお弁当と、そして餞別の100円。20年後、熊本さんと再会する身重の幸江の手には、そのときの100円札がしっかりと握られていました。待ち合わせの新幹線のホームへと向かう幸江。身重のため、階段を上がるだけで息が切れますが、その苦しさは20年前、駅へと駆けつけた熊本さんのそれと同じです。一目見てすぐにわかり合う2人。「熊本さーん」「森田さん」。泣いて抱き合う2人の姿にかぶせられるモノローグ。「幸や不幸はもういい/どちらにも等しく価値がある/人生には明らかに/意味がある」。

1996年刊行の文庫版からは抜け落ちて作品も収録された完全版。つらいとき、悲しいとき、人生の意味を見失いかけたとき、本作はきっと、あなたの力になってくれるはずです。

主人公の幸江とイサオ。早く職に就くことを催促する幸江は、イサオがキレてちゃぶ台をひっくり返すことを見越して予めちゃぶ台を畳みに固定している。が、それを律儀にはずしてまでわざわざちゃぶ台をひっくり返すイサオ…って、言葉で説明してもさっぱり面白くないですね(笑)

幸江が勤めるあさひ屋のマスター。惚れているがゆえに、従業員である幸江に過剰なまでのサービスをする

母の顔を知らない幸江。あの手この手で行方を探るのだが…

いじめられっ子だった幸江は、自虐をすることでしか人間関係を築けない。そんな幸江にはじめて対等に接してくれたのが熊本さんだった

ところがなぜかクラスの華やかなグループと仲良くなってしまった幸江は、途端に熊本さんを遠ざけ始める。孤高を保つ熊本さんだが、影では泣いていた

中学時代の幸江の想い人・前田くん。当然フラれるものと思っていたのだがなんと

ラスト直前、20年ぶりに熊本さんに会いに行く幸江。100円札が時代を感じさせる (C)業田良家/竹書房