約20年でカメラの数は5倍に!驚愕のW杯放送権額

更新日:2014/7/1

ワールドカップがもっと楽しめるサッカー中継の舞台裏

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川マガジンズ
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:村社淳 価格:691円

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 本書は、テレビマンの目からみたサッカーの話となっている。もとが連載作品ということもあり、短い思い出話がいくつも詰まったような構成だ。全体を見渡すと、いくつかの視点というか軸があるのだが、そのひとつが中継ではなく番組作りの裏舞台である。

ご承知のように、NHKを除くと民放各局はスポンサーCMを番組中に挟む。そんなのは当たり前だと言われるかもしれないが、実はこういった広告の放送が発達しているのはアメリカや日本で、公共放送が主流のヨーロッパでは、そもそもCMなど挟む必要はない。インターバルの多い野球が盛んな国と動きっぱなしのサッカーが盛んな国々の違いだ。そこで、企業名を露出する別の方法がとられるようになる。「オンスクリーン・クレジット」というのもそのひとつで、これはオリンピックなどでも見られる、タイム計測の部分に時計メーカーのロゴを入れたりする方法だ。またバーチャル広告も、諸問題があり試験的ではあるが、手法のひとつだ。

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さて、日本は残念ながら決勝トーナメントに進めなかったが、それでも中継は続く。試合結果と関係なく、事前にべらぼうな額の放送権を押さえたのだから当然である。実は、そもそも日本が出場していなくても、ワールドカップは放送する。90年のイタリア大会から98年のフランス大会は3大会をパッケージ販売していた。自国代表の都合などお構いなしに、3大会先まで決めておくということだ。

こういう囲い込みが影響し、放送権料が高騰したというのが本書の分析だ。根拠となる具体的な数字もあって、74年の西ドイツ大会を日本では現在のテレビ東京がはじめて生中継したとのことだが、このときの決勝戦の生中継と残りの録画放送権料が70万マルク、約8400万円。一方、02年ワールドカップでは13億スイスフラン(約1027億円)と跳ね上がる。なぜ、西ドイツ大会はマルクで販売され、日韓共同開催がスイスフランなのか? またその間のチケット代の推移なども本書ではしっかりページを割いて解説しているので、こちらも興味深い。

技術的な裏舞台も忘れるわけにはいかない。わかりやすいのがカメラの数だ。約20年で5倍にも増えたという。その結果、ヘディングが決まった瞬間タバコの火を消すオフト監督、ベンチで崩れ落ちる選手たちまでも記録した「ドーハの悲劇」の映像だ。映像が悲劇をよりドラマチックにしたかもしれないという話が印象的だった。


機材と言っても、カメラばかりではない。回線の手配も大切な仕事

いわゆる放送席に関する話しも、興味深かった

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そしてあの名曲の秘密も…