たった9坪の家で4人家族がどう暮らす?! 主婦目線でユーモアたっぷりに綴った家づくり奮闘記

小説・エッセイ

更新日:2018/5/15

9坪ハウス狂騒曲

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 光文社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:萩原百合 価格:648円

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建築家の増沢洵が1952年に建てたわずか9坪の「最小限住居」は、日本の木造建築の手法を用いたモダニズム住宅で、戦後の建築家に衝撃を与えたことで知られる。

夫の勤務先のイベント展示物として、この家の軸組が再現された。これを見て惚れ込んだ夫の発案で、夫婦、娘2人の一家4人が暮らす家づくりが始まる。土地探しから、設計、建築、実際の生活までの七転八倒を主婦である著者が、ユーモアたっぷりに描いた体験記だ。

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最初は「9坪」に不満いっぱいだった著者が、この家のシンプルな美しさに惹かれ、葛藤を繰り返しながら、広さや装備に対する欲をどんどんそぎ落としていく。そのプロセスが、愉快なツッコミを入れながら、てらいのない正直な文章で描かれていておもしろい。特に生活に合わせて家を作るのではなく、家族の幸せな暮らしに何が大切なのかを見極めて、9坪ハウスに合った生き方をしようと思うに至るプロセスは潔く、とても参考になる。

デザイナーとやりとりをしながら完成した家は、囲いひとつない28坪の土地に、四角い箱がポツンと置かれた雰囲気。雨戸はなく、巨大な障子を開け放てば、大きなガラス窓からリビングは丸見えだ。しかも徹底的に「必要なモノ」しか置けない狭さで、洗濯物を干すベランダもない。主婦である著者にとっては、頭の痛いことだらけだが、それでも2階まで吹き抜けの開放感や、大きなガラス窓越しに緑豊かなソトとウチがつながる暮らしは何者にもかえがたく素晴らしい。

読後、自分の暮らしを振り返って、いかに贅肉が多い暮らしをしているのかを痛感させられた。本当に必要なものは、実はすごく少ない。最小限、必要なモノだけを置いた暮らしをすれば、身も心も軽くなり、様々な呪縛や拘束から解放されて、真に豊かな暮らし=生き方ができることを、この本は示唆している。

あっぱれ、ニッポンのウサギ小屋である。

夕暮れどきの9坪ハウスの風景。2階で娘さんが吹き抜けの大窓から外の景色を楽しんでいる。要所要所に著者が描いたイラストが挿入されていて、家のイメージがわかりやすい

イベント展示物として再現された増沢邸の骨組み。この美しきプロポーションに夫が惚れ込んだのが、家づくりのきっかけだった

1階は9坪、2階は6坪、計15坪。つまり、19.5㎡。「え?9坪?聞き間違いか。」夫の説明に混乱する著者の様子が見えるようだ

1952年に建てられた増沢邸は、現在でも通用するモダンな建物。特に南面開口部が全面障子になっているところはインパクトが強い